自民、公明両党の税制調査会は27日、非公式の幹部会合をそれぞれ開き、2024年度税制改正に向けて、所得減税の具体策の検討を始めた。自民党の宮沢洋一税調会長は1人当たり計4万円の所得税と住民税の定額減税について、「1年限り」との認識を示した。今後、25年以降に見込まれる防衛増税との整合性についても議論する見通しだ。
政府は来年6月に所得税を3万円、住民税を1万円、それぞれ定額で減税する方針を決めた。会合後に記者団の取材に応じた宮沢税調会長は、所得減税の延長の可能性について「当然1年限りという認識だ」と強調した。また、経済状況次第で減税を継続できるようにする「景気条項」を盛り込む考えは「全くない」とした。
宮沢氏は幹部会合で、減税に所得制限を設けるかどうかを検討すると明らかにした。岸田文雄首相が「(定額減税は)子育て世帯支援の意味合いを持つ」と慎重な姿勢を示す一方、与党内では減税対象から富裕層を除外すべきだとの考えも根強い。減税の対象を「年収2000万円以下」に絞る案も浮上しており、詳細を詰める。
年末にかけて行う税制改正論議では、防衛費増額のための増税実施時期を決められるかも焦点。復興特別所得税の転用という形で所得税の増税が含まれるため、公明の幹部会合出席者からは「所得税を減税するのに、増税というのは分かりにくい」との意見が出たという。
首相は27日の衆院予算委員会で防衛増税について「24年度から実施する環境にはない。定額減税と同時に実施することにはならない」と明言した。宮沢会長は増税時期に関して「しっかり議論はしなければいけない」と述べたが、今後の議論次第ではさらに先送りされる可能性もありそうだ。
24年度税制改正論議では、半導体や蓄電池などの国内生産拡大を後押しする「戦略物資生産基盤税制」、知的財産から生じる収入を税優遇する「イノベーションボックス税制」の創設を検討する。賃上げに積極的な企業の税負担を減らす「賃上げ促進税制」も拡充する方向で調整を進める。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2023/10/27-18:24)