政府は10日午後、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」の裏付けとなる2023年度補正予算案を持ち回り閣議で決定した。一般会計総額は13兆1992億円。国民生活を圧迫する物価高への対応とともに企業の賃上げや国内投資の促進へ、補助金給付や基金上積みなど政策を総動員。コロナ禍から回復途上にある経済を下支えする。
積極的な支出で支持率低迷が続く政権の浮揚につなげる思惑も透けるが、借金頼みの財政は厳しさを増す。政府は20日に補正予算案を臨時国会に提出し、月内の成立を目指す。
歳出のうち経済対策費は13兆1272億円。分野別には(1)物価高への対応(2兆7363億円)(2)持続的賃上げや地方の成長(1兆3303億円)(3)半導体や宇宙開発など成長力強化・国内投資促進(3兆4375億円)(4)人口減少対策と社会変革推進(1兆3403億円)(5)国民の安全・安心確保(4兆2827億円)―を投じる。
歳入(財源)は予算額の7割近い8兆8750億円を新規国債(借金)発行で賄う。23年度の税収の上振れ分はわずか1710億円。同年度当初予算に新型コロナ対策やウクライナ情勢対応などで計上した計5兆円の予備費も2.5兆円を減額し財源の一部に充てる。
物価高対策では、低所得の住民税非課税世帯に7万円を給付するため1兆592億円を計上。24年4月末まで期限延長を決めた電気やガス、ガソリン代の負担軽減策にも7948億円を充てる。中堅・中小企業の賃上げ環境整備などが5991億円。経済安全保障上、重要な半導体関連支援策は特別会計や基金活用を含め2兆円規模となる。
補正予算と当初予算を合わせた23年度の歳出総額は歴代4位の127兆5804億円まで膨張。24年度当初予算には、物価高対策の目玉として所得税・住民税を1人当たり計4万円減税する総額3兆円台半ばの定額減税も加わる。鈴木俊一財務相は閣議決定後、記者会見で「減税をすればその分、国債の発行が必要になる」と語り、厳しい財政運営が続くとの見通しを示した。
◇2023年度補正予算案の概要
▽一般会計総額 13兆1992億円
【歳入】
税収 1710億円
新規国債 8兆8750億円
建設国債 2兆5100億円
赤字国債 6兆3650億円
税外収入 7621億円
昨年度剰余金 3兆3911億円
【歳出】
経済対策関係 13兆1272億円
防衛力強化資金への繰り入れなど 1兆4851億円
国債整理基金特別会計へ繰り入れ 1兆3147億円
地方交付税交付金 7820億円
新型コロナウイルス感染症および原油価格・物価高騰対策予備費 ▲2兆円
ウクライナ情勢経済緊急対応予備費 ▲5000億円
その他既定経費の減額 ▲1兆0098億円
▽補正後の一般会計総額 127兆5804億円
【歳入】
税収 69兆6110億円
新規国債 44兆4980億円
建設国債 9兆0680億円
赤字国債 35兆4300億円
税外収入など 13兆4714億円
【歳出】
一般歳出 84兆7245億円
地方交付税交付金等 17兆1812億円
国債費 25兆6748億円
(注)▲は減額
◇23年度補正予算案のポイント
一、一般会計の歳出総額は13兆1992億円
一、経済対策関係経費は13兆1272億円
一、税収は1710億円上振れ
一、国債追加発行は8兆8750億円
一、補正後の歳出総額は127兆5804億円
一、補正後の税収見込みは69兆6110億円
一、補正後の新規国債発行は44兆4980億円
(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2023/11/10-19:37)