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史上最高値、乏しい実感=バブルのツケ、更新に34年―問われる持続力、成長回帰カギ〔潮流底流〕

記事提供元=時事通信社
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日本経済クロニクル

 日経平均株価が4万円の大台に迫った1989年の暮れから34年余り。日本経済はバブルに踊ったツケを負い、深刻なデフレに苦しみ続けた末にようやく史上最高値にたどり着いた。とはいえ、物価高で個人消費は盛り上がりを欠き、かつてのような好景気の実感は広がっていない。株高が持続し、景気回復の恩恵が行き渡るには、賃上げによってデフレを克服し、成長力を取り戻せるかにかかっている。

◇デフレ不況

 証券会社のボーナスが「封筒が立つ」ほどの厚みだと評判になったバブル絶頂期。東京・日本橋兜町の東証には売買注文が殺到し、銘柄と株数を手のサインで伝える「場立ち」と呼ばれた証券マンの熱気にあふれていた。その1人だったSMBC日興証券の吉村博之コンプライアンスオフィサーは、34年前の相場を「上がるから買う、買うから上がるの連鎖だった」と懐かしむ。

 まだまだ上昇し続けると信じて疑わなかった株価は、年が明けると下落に転じた。日銀による利上げや当時の大蔵省が90年に不動産融資の総量規制を通達したことなどをきっかけに、高騰を続けていた不動産市況も逆回転を始める。金融機関は巨額の不良債権を抱え、北海道拓殖銀行や山一証券などが相次いで破綻に追い込まれた。

 みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは、不良債権処理に追われた銀行の「貸しはがし」により、「企業が将来的に利益を見込める事業や設備投資、雇用を切り、需要が不足してデフレになった」と分析。デフレに陥ったことが株価低迷が長引いた最大の要因だと指摘する。

 企業は防戦一方で、労働組合も雇用維持を優先し、賃金水準は90年代から横ばいが続いた。小売店や外食チェーンは安さを競い合い、デフレに拍車が掛かった。終値でバブル後の最安値7054円98銭を記録したのは2009年3月。その半年前にリーマン・ショックが起きた当初、政権内にあった「ハチが刺した程度だ」との楽観論は当てが外れた。

◇異次元緩和が転機

 株価上昇の転機は、日銀の黒田東彦総裁が13年の就任直後に始めた異次元の金融緩和だった。国債や上場投資信託(ETF)を大量購入。この「黒田バズーカ」は第2次安倍政権の経済政策「アベノミクス」の一環として、世界的な緩和マネーを呼び込んだ。SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは「日本を買おうという流れになった」と振り返る。

 昨春、東証が上場企業に資本効率を意識した経営を要請すると、円安も追い風となって海外からの資金流入が加速した。今年からは新たな少額投資非課税制度(NISA)がスタート。日本証券業協会の森田敏夫会長は、損失を恐れて資産運用に二の足を踏んでいた層の「意識や行動が変わり始めた」と期待を膨らませる。

 今後の課題は、株高の持続力だ。大和証券グループ本社の松井敏浩副社長は「5万円、10万円は決して夢ではない」と鼻息が荒いが、89年に世界2位だった日本の名目GDP(国内総生産)は中国、ドイツに抜かれ、23年に4位へ転落。経済成長力に陰りも見える。

 経済同友会の新浪剛史代表幹事は「ぬか喜びはしない方がいい」と述べ、街角の景況感が34年前とは異なると指摘する。昨年に続く大幅な賃上げで個人消費が回復し、デフレ完全脱却と成長への回帰を実現できるのか。「やっとスタートラインに立った」(ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミスト)日本経済の真価が問われる。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/02/22-17:09)

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