ガソリン車、世界販売が初めて半分以下に…EV3%の日本でスタンドが半減、どう稼ぐ?

●この記事のポイント
・2026年上半期、エンジンだけで走るガソリン車の世界販売シェアが49%と初めて半数を割った。日本のEV比率は約3%だが、上半期の販売は前年の2.1倍に伸びた
・全国の給油所は2025年3月末で2万7009カ所。ピーク時から約55%減り、給油所が3カ所以下の「SS過疎地」は381市町村に広がった
・生き残りの鍵は充電器の設置そのものより、立地・敷地・地域との接点という資産を「生活インフラ」として組み直せるかにある
2026年上半期(1〜6月)、エンジンだけで走るガソリン車が世界の新車販売に占める割合は49%となり、初めて半数を割り込んだ。調査会社モビリティ・グローバル(旧S&Pグローバル・モビリティ)のデータを日本経済新聞が分析したもので、2021年の73%から5年足らずで24ポイント下がった計算になる。ハイブリッド車(HV)が主役の日本から見れば、遠い国の話に聞こえるかもしれない。
だが足元の数字を追うと、国内でも変化は始まっている。EVの販売は前年の2倍のペースで伸び、街のガソリンスタンド(SS)はピーク時の半分以下に減った。燃料を売る商売は、この先どこへ向かうのか。公的統計と業界の動きから整理してみたい。
●目次
世界ではエンジン車の比率が確実に縮んでいる
同データによると、上半期のガソリン車の販売は前年同期比10%減の2025万台にとどまった。代わりに伸びたのがHVで、10%増の727万台(シェア18%)。バッテリーEVも12%増の687万台(同17%)と、HVに迫る規模になっている。国際エネルギー機関(IEA)によれば同じ期間の世界の新車販売全体は約5%減っており、ガソリン車は市場のおよそ2倍のペースで縮んだことになる。地域別の落ち込みは中国(26%減)が最も大きく、欧州(13%減)が続いた。
とはいえ、HVもエンジンを積んでいる。ガソリン車の後退は、エンジンそのものが消えることと同じではない。いま起きているのは、エンジンだけのクルマから、電気の力を組み合わせたクルマへの置き換えだと見たほうが実態に近い。
変化がもっとも鮮明なのが欧州だ。EUでは1〜8月のEV販売が約164万台とガソリン車をわずかに上回り、シェアは前年の15.8%から21.7%に上昇した。ガソリン車とディーゼル車を合わせた比率は29%まで下がっている。
背景には、中東情勢の悪化に伴う原油高もある。日本では政府がレギュラーガソリンを1リットル170円程度に抑える補助金を続けており、9月中旬の支給額は1リットル当たり36円に達した。補助がなければ200円を超える水準にあるということだ。
日本の「3%」をどう読むか
国内に目を移すと、2026年上半期に販売されたEV乗用車は5万9337台。前年同期の2.1倍で、乗用車全体に占める割合は約3%と過去最高を更新した。1〜7月の登録車ベースでは6万1090台に達し、年間で初めて10万台を超える可能性が出てきた。政府の購入補助金の上限が130万円に引き上げられたことが追い風になっている。
3%という数字は欧州と比べればまだ小さい。ただ、伸び方の中身を見ると、普及の経路が変わりつつあることがわかる。
ひとつは軽自動車のEVだ。日産「サクラ」と三菱「eKクロスEV」は2024年9月に累計生産10万台に達した。2026年7月には中国BYDが、海外メーカーとして初めて日本の軽規格に合わせて専用開発した「ラッコ」を214万5000円から発売している。軽は国内新車販売の約4割を占める市場で、ここにEVの選択肢が増える意味は小さくない。
二つめは商用車だ。ヤマト運輸は2025年6月時点で約4200台のEVを集配業務に使っており、2030年度までに集配車両約4万台の6割に当たる2万3500台へ増やす計画を掲げる。同社は、東日本大震災の際に燃料不足で車両を動かせなかった経験がEVに目を向けるきっかけだったと説明している。脱炭素だけでなく、エネルギー調達の分散という発想がそこにある。
三つめは国内メーカーの新型車だ。上半期の国内EV販売で首位に立ったのはトヨタ「bZ4X」の1万3777台で、日産の新型「リーフ」が続いた。トヨタはHVを中心とした全方位戦略を維持しつつ、上半期の世界EV販売を前年同期の約2.4倍に伸ばしている。
もっとも、ガソリンスタンドの経営にとって本質的なのはEVの比率そのものではない。
「日本の燃料需要を減らしてきた主役は、EVよりむしろHVの燃費向上と人口減少です。EVが3%でも、保有車両全体の燃費が良くなれば1台当たりの給油量は確実に減る。スタンド経営者が見るべきなのは、新車の動力別シェアより、自分の商圏で売れる燃料の総量がどう推移するかです」(自動車アナリスト・荻野博文氏)
30年で3万カ所のスタンドが消滅
資源エネルギー庁によると、2025年3月末の全国の給油所数は2万7009カ所で、前年度から405カ所減った。ピークだった1994年度末の6万421カ所と比べると、約55%の減少になる。
影響は地方ほど深刻だ。市町村内の給油所が3カ所以下の「SS過疎地」は、2025年3月末時点で381市町村にのぼる。自宅から最寄りの給油所まで15km以上離れた住民がいる市町村も291ある。帝国データバンクの調べでは、2024年のガソリンスタンドの倒産・休廃業は184件で、3年連続で増えた。
減少の理由は需要減だけではない。埋設から40年を超えた地下タンクへの腐食対策の義務化、経営者の高齢化と後継者不在、人手不足が重なっている。事業承継のマッチングサイトには、後継者不在を理由に売りに出されたスタンドが今も並ぶ。
一方で、年間の減少数は2010年代前半の1000カ所超から400カ所前後へと鈍ってきている点は冷静に見ておきたい。採算の合わない店舗の整理が一巡し、残った事業者が次の一手を探す段階に入ったと読むこともできる。
「給油所」から「生活インフラ」への組み替え
業界最大手のENEOSは、資源エネルギー庁の研究会で、本業の給油所で利益が出なければ、ほかの商売で稼いでも本質的な解決にはならないという趣旨の考えを示している。多角化は本業を補うものであって、代わりにはならないという立場だ。
そのうえで同社が進めるのが、本業の効率化と、給油以外のサービスの組み合わせだ。効率化の面では、2026年2月の消防関連省令の改正で、セルフ式給油所の給油許可をAIが担う仕組みが認められ、導入が始まった。人手不足に悩む現場の固定費を下げる狙いがある。
組み合わせの面では、コンビニやカフェ、コインランドリーの併設に加え、郵便局などの生活サービスと一体化した店舗も試している。茨城県牛久市では、約2000坪の敷地に複数のサービスを集めた「マイクロモール型」の実証も行われている。
立地を物流に生かす動きもある。ENEOSと三菱商事は2023年に合弁会社を設立し、給油所で宅配荷物を一時保管して近隣への配送を担う仕組みを実証中だ。2026年4月には、建設機械レンタルのSORABITOと組み、給油所の一角から建設車両を24時間無人で貸し出す実証も始めた。レンタル会社にとっては、土地や人を確保せずに貸出拠点を持てる利点がある。
では、EVの急速充電器を置けば解決するのか。話はそう単純ではない。
「急速充電は設備投資と電力の契約容量にかかる負担が大きいわりに、1回あたりの売上は給油より小さく、利用台数が読みにくい。充電器単体で採算を取るのは、現状では難しい。充電の数十分をどう過ごしてもらうか、つまり飲食や物販、洗車などとの組み合わせで設計しないと、設備が遊んでしまいます」(戦略コンサルタント・高野輝氏)
地域インフラとしての役割も見落とせない。国は災害時に停電しても給油を続けられるよう、自家発電設備を備えた「住民拠点SS」の整備を支援してきた。過疎地では、自治体が廃業したスタンドを引き継ぎ民間に運営を任せる「公設民営」の例も生まれている。民間の採算だけでは維持できない地域があることも、また事実だ。
「何を売るか」ではなく「何を持っているか」
スタンドが持つ資産を並べてみると、幹線道路沿いの広い敷地、危険物を安全に扱う管理のノウハウ、地域の常連客との日常的な接点、そして災害時に頼られる拠点としての信頼がある。ガソリンの販売量が減っても、これらの価値がすぐに消えるわけではない。
「スタンド業界は、売上の大半を一つの商品に依存してきた典型的な成熟産業です。自社の強みを『燃料を売ること』と定義している限り、需要減に合わせて縮むしかない。立地と設備と顧客接点を持つ『地域の拠点』と定義し直せば、組み合わせられる事業の幅は大きく変わります」(同)
もちろん、どの事業を組み合わせれば成り立つかは立地によってまったく異なる。都市部の幹線沿いと山間部の町とでは、答えは同じにならない。万能の処方箋はないと考えたほうがいい。
それでも、主力商品の需要が構造的に減っていく局面で、手元の資産を棚卸しし、事業の定義から見直すという作業は、ガソリンスタンドに限った話ではない。デジタル化や脱炭素の波を受ける多くの業種にとって、スタンドの模索は身近な参考事例になるはずだ。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=高野輝/戦略コンサルタント)
【主な参照データ・出典】
日本経済新聞(モビリティ・グローバルのデータに基づく2026年上半期の動力別世界販売)、Electrek(2026年10月5日、同データの内訳)
IEA「Electric car markets in a time of uncertainty」(2026年上半期の世界EV販売)
Hürriyet Daily News(EU 2026年1〜8月の動力別販売、ACEAデータ)
共同通信(2026年9月9日、ガソリン価格と補助金)
読売新聞・共同通信(2026年上半期の国内EV販売、1〜7月の登録車EV販売)
MONOist(サクラ・eKクロスEV累計生産、ヤマト運輸の会見)
共同通信・Car Watch(BYD「ラッコ」発売)
Kyodo(トヨタ2026年上半期世界販売)
資源エネルギー庁「令和6年度末揮発油販売業者数及び給油所数」
くるまのニュース(SS過疎地381市町村、資源エネルギー庁資料に基づく)
帝国データバンク(2024年ガソリンスタンド倒産・休廃業)
ENEOS「SS過疎地研究会」資料(2022年)、「新たな地域燃料流通に関する研究会」資料(2025年12月)
LOGISTICS TODAY(ENEOS・三菱商事のLife Hub Network、ENEOS×SORABITO実証)











