「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/4月19日号)は『本業消失』という特集を組んでいる。「事業環境は変化のスピードを上げている。本業を失うことすら珍しくない。変わらなければ生き残れない時代の新・経営戦略」という内容だ。
例えば、今年創立80周年を迎えた富士フイルムホールディングス。しかし、デジタル化の大波が押し寄せた10年前、富士フイルムが圧倒的なシェアを誇り利益の過半を稼いできた写真フィルムが、店頭から消えてなくなるのは時間の問題となっていた。富士フイルムは危機意識を社内で共有し、過去のしがらみを断ち切り、古森重隆会長兼CEOの下、「破壊と創造」を進め、液晶フィルムのフラットパネルディスプレー材料事業、化粧品などのライフサイエンス事業を中心とする新たな企業に生まれ変わった。2012年度売上高は2兆2147億円(営業利益1141億円)だ。
一方で、「かつて巨人と呼ばれ、富士フイルムが仰ぎ見る存在だった、米イーストマンコダックは経営破綻した。いったい、何が違っていたのだろうか?」。イーストマンコダックは、12年1月に米国連邦破産法第11条(チャプター11)に基づく事業再生手続き入り。13年9月にチャプター11から脱却。同年11月にはニューヨーク証券取引所に再上場した。
●富士フイルム「勝ち残りの5法則」
・法則1…『悪い数字』から逃げない
「長年の事業が変調を来した場合、『まだ何とかなる』という希望的観測を抱き、対応が後手に回る企業が少なくない」。富士フイルムは、利益の3分の2を稼ぎ出していた写真フィルム事業の絶望的な需要予測に向き合い、自らリストラした。「『手遅れにならなかったのは「嫌がられても予測結果を報告し続けた」という当時の予測分析に携わった元・感材部長・中村和夫氏の存在が大きい」。上司に直言できる部下の存在がポイントだ。
・法則2…自社の強みを棚卸し
「事業構造改革を進めるうえで、保有する技術を『棚卸し』し、自社の強みを伸ばすことに懸けた」。「構造改革以降、成長分野に位置づけたライフサイエンス分野も、写真フィルムのコア技術を『横展開』したもの」で、新たな事業を生み出すための研究開発費・年間2000億円を減らすことはなかった。
・法則3…M&Aで時間を買う
富士フイルムは04年に構造改革に踏み切って以来、猛烈な勢いで、M&A(合併・買収)を行ってきた。「これまでに7000億円近くを投じ、国内外合わせて約40社を買収している。新規事業では時間を買う戦略で、インクジェットプリンタや医療分野で目立つ」。01年には富士ゼロックスへの出資比率を引き上げて連結子会社化。現在は、この富士ゼロックス(ドキュメントソリューション分野)の売上高は1兆0122億円と、ホールディングス全社で最大の利益源になっている。
・法則4…改革の痛みを恐れない