経済誌各誌は揃って原油安特集を組んだ。
「週刊エコノミスト」(毎日新聞社/2月3日号)の特集『とことん分かる原油安』によれば、原油価格が下げ止まらず、エネルギー関連銘柄を中心として株価も大幅に下落しているという。
「米国産標準油種(WTI)が一時、約5年8カ月ぶりに1バレル=50ドルを割り込んだ1月5日、米ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は前週末比1.9%安の大幅下落で取引を終えた。下げ止まりの兆しが見えない原油安が嫌気され、米・石油大手シェブロンなどエネルギー関連銘柄を中心に売り込まれた結果だった。米ニューヨーク証券取引所、ナスダックを合わせた株式市場の時価総額はこの日、1日で約6200億ドル(約73兆円)が吹き飛んだ」(「エコノミスト」より)
米国で開発が進むシェールオイルの産出増や、旺盛なエネルギー需要を支えた中国をはじめとする新興国の成長鈍化が鮮明になり、原油の需要が落ち込んでいる。昨年11月には石油輸出国機構(OPEC)が減産見送りを決めたことで、需給の緩む懸念が原油市場で急速に拡大。昨年半ばまで1バレル=100ドル前後の高値で推移していた原油価格は、わずか半年余りで半値以下に急落したのだ。その結果として、株式相場にも不安定をもたらしている。
「翌6日の東京株式市場では日経平均株価が3%下落し、約3週間ぶりに1万7000円台を割り込んだほか、安全資産とされる日本国債への買いが集中。日本の長期金利(10年物国債)が初の0.2%台へと低下(国債価格は上昇)し、ドル・円相場も1ドル=119円台前半と前日に比べ1円強もの円高が進行した。原油安が基点となって、世界の株式や債券、為替市場を激しく値動きさせている」(同)
1バレル=20ドルもあり得る?
今後、どこまで下がるのか。
「エコノミスト」は「WTIの需給がバランスするには、1バレル=65ドルを超える水準が必要だが、現在は需給の均衡を欠いた状態だ。短期的には現在の水準から1バレル=8~10ドルほどWTIが下落してもおかしくない」という欧州の専門家の声を紹介する。つまり、1バレル=35~40ドルもあり得るというわけだ。
一方、最悪の場合には原油価格が20ドル台まで下落する可能性を指摘するのは「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/2月7日号)だ。特集『世界を揺るがす 原油安 超入門』では、「サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相が昨年末に『20ドルに下落しても関係ない』と述べ、減産は石油輸出国機構(OPEC)加盟国の利益にならないと強調したから」という国内の専門家の声を紹介している。