同じく「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/2月7日号)の特集記事『サウジが仕掛けたチキンレース 原油価格は20ドル台突入も』でも、「瞬間的には20ドル台に突入すると見ているエコノミストもいる」と伝えている。
原油価格の下落の背景には、サウジアラビアによる“シェールつぶし”があると「ダイヤモンド」「東洋経済」両誌は指摘しているのだ。
シェールバブル崩壊か?
「1月7日、米国発のニュースが世界中を駆け巡った。テキサス州のシェールオイル・ガス開発会社、WBHエナジーが米連邦破産法11条適用を申請、経営破綻したのだ。シェールオイル開発企業では初の破綻とされ、負債額は約60億円。(略)引き金は原油価格の急落。売り上げが確保できず、資金繰りが悪化した。同社はシェール開発会社の中では小規模だが、現地では原油安で採算を確保できずに破綻する企業が増えると見られている」(「東洋経済」より)
「ダイヤモンド」では米国発現地ルポ『標的にされたシェール 消えゆく革命の“炎”』を掲載。原油価格下落の直撃を受け、新たな掘削が停滞し、探査や生産設備の製造を担当する石油サービス会社で次々にリストラが始まっている現状を紹介している。
「シェール革命は、ベンチャー企業でも億万長者になれるという、まさに『アメリカンドリーム』を体現するムーブメントだったが、もはや『弱肉強食』の淘汰の段階に突入している」(「ダイヤモンド」より)
産油国として世界一の座に着いた米国のシェールバブルも、転換期を迎えているようだ。
供給面で最大のイベントは6月のOPEC総会だが、「足元では3~4月初めの米国のシェール関連企業の四半期決算に注目したい。銀行側が融資を継続しないと判断すれば、倒産企業が相次ぎ、供給が減ることで需給が改善する」(同)と予測する。
原油安は、日本経済にとってプラス面もマイナス面もある。資源・エネルギー関連企業の株価は大きく値を下げる一方で、食卓に並ぶ野菜(ビニールハウスの暖房機器)や魚介類(漁船の燃料)、産地から小売店までの輸送コストにはプラスの影響を与えている。
「これからはマグロの水揚げが増えるでしょう。原油が安くなっていますから」(同)と築地のある卸売関係者は語る。つまり、原油価格の下落は、大量の燃料を必要とする遠洋漁業にとって大きなプラスとなるのだ。
1月には「温浴施設はボイラー燃料を多く使うはず」との発想で直営、フランチャイズ合わせて40店のスーパー銭湯を展開する極楽湯の株価が急伸したこともある(「東洋経済」より)。
原油価格はさまざまな経路で、世界経済、家計に大きな影響を与えているのだ。
(文=松井克明/CFP)