不倫疑惑の斎藤由貴さん、「転移性恋愛」の可能性…相手男性、医師として許されざる行為
(2)治療が中断するのは、主治医が患者の愛情欲求を満たさず、物別れに終わるからだが、こういう患者は新しい主治医にもしばしば恋愛感情を抱く。このように同じパターンの関係を繰り返すことを、精神分析では「反復強迫」と呼ぶ。平たくいえば、「二度あることは三度ある」ということだ。
(3)一時的な恋愛関係を結ぶのは、市民道徳に反するし、医師の品位にもかかわるので、本来あってはならないはずだが、実際には結構あるようだ。これは、慎重な態度を取ることができず、自分の欲望を満たすために転移性恋愛を利用する医師がいるからだろう。
ニューヨークに4年もいたのなら
斉藤さんが認めた相手の医師への好意は、転移性恋愛であるように見える。斉藤さんが6年ほど前に減量した際に、指導と管理を行ったのがこの医師だったらしいので、斉藤さんは信頼と尊敬を抱いているはずだし、減量のおかげで再ブレイクできたことに感謝してもいるはずだ。
このような転移性恋愛に対して、「拒否すべき義務」が医師にはあるとフロイトは述べている。ところが、斉藤さんの不倫相手とされた医師の振る舞いは、禁欲的とはいいがたい。斉藤さんと指を絡めた“恋人つなぎ”の写真は、主治医と患者以上の関係という印象を与える。
“恋人つなぎ”について、この医師は「私は実はニューヨークで4年間仕事をしていましたので」などと弁明した。ニューヨークでは、ウッディ・アレンの映画の登場人物が何かあるたびに精神分析医のところに相談に行くのを見ればわかるように、かつて精神分析が盛んに行われていた。当然、医師と患者の関係で起こりうる転移性恋愛については、その危険性も含めて日本以上に研究されている。
これは当然だ。(1)結婚で終わる転移性恋愛はきわめてまれで、(2)治療の中断や(3)一時的な恋愛関係が圧倒的に多い以上、患者の怒りや復讐心をかき立てる可能性が高く、訴えられるリスクもないわけではないのだから。
そのニューヨークに4年もいたのなら、たとえ精神科医ではなくても、転移性恋愛についてもっと勉強するべきだった。転移性恋愛について知っていたら、「ボクの中でひとつの作品みたいな感じ」である斉藤さんに対してもっと慎重に振る舞えたのではないだろうか。
(文=片田珠美/精神科医)
【参考文献】
ジークムント・フロイト『転移性恋愛について』(小此木啓吾訳『フロイト著作集 9 技法・症例篇』人文書院)