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今回直虎が政次に「卑怯者と未来永劫語り伝えてやるわ」と言ったことで、一応井伊家の文書との辻褄は合った。だが考えてみれば、この局面を脱しさえすれば政次を卑怯者に仕立てる必要はないはず。井伊が徳川の家臣となった時点で名誉が回復されそうなものだし、そもそも劇中では井伊家の人々も政次の家臣たちも一様に政次を忠臣としてとらえていた。この状況でいくら直虎だけが政次を卑怯者呼ばわりしても、それが定着するとは思えない。政次は忠臣であったが、文書には奸臣として書かれたという本作の設定は、やはり少々無理がある。
直虎と政次が「だまされていた領主とだましていた家老」である芝居を打つ場面についても疑問の声が上がっている。多くの視聴者の感動と涙を誘ったのだからドラマ的には大成功なのだが、劇中の2人にとって必要性があったのかどうかということだ。近藤は「政次が直虎をだましていた」との自説を本気で信じていたわけではないし、家康の軍勢はすでに出立してしまったため、家康やその家臣たちが2人の大芝居を見るわけでもない。もしかしたら家康が残した目付役が刑場に居合わせたかもしれないが、そもそも家康は直虎と政次が裏で通じていることを知っている。では、直虎と政次は誰に対して「政次は奸臣だった」とアピールする必要があったのか。実は結構謎なのである。「真実はどうあれ、徳川様の仕置きには従います」という井伊の姿勢を家康に見せつけたとも解釈できるが、だとしたら過剰なパフォーマンスと言われても仕方がない。
「史実」と整合性を持たせようとしている跡は見えるが、それでもよく見ると無理が生じていることが明らかとなった今回。政次退場に続き、次回は柳楽優弥演じる龍雲丸とその一党がピンチに陥りそうだ。仮に龍雲丸まで退場となると、菅田将暉が直政役で登場するとされる38回までの間をどうやって持たせるのかが焦点になってくる。「政次ロス」で視聴率もロスしてしまわないかに注目したい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)
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