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「驚きの活躍」FIFAが認めた乾貴士…評価できなかった日本の未成熟な評価基準

文=安藤隆人/サッカージャーナリスト
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乾がW杯で輝けたワケ

 山本氏が言うように、今回のW杯において乾のプレーは“世界に通用する”どころか、相手にとって強烈な脅威となっていた。セネガル戦でも、一瞬のスピードで相手の間隙に入り込んで、正確なファーストタッチとドリブル、パスで柴崎岳、香川真司と共に日本の攻撃のリズムをつくり出していた。

 貴重な同点弾も、右サイドの柴崎から左サイドの長友佑都に大きなサイドチェンジの縦パスが入った瞬間、乾はゴール前のスペースに入り込み、長友の中へのトラップが流れて来たところを冷静にコントロールし、相手が飛び込めない間合いで前を向くと、パスかシュートかドリブルかの選択肢を相手にちらつかせながら、中へ持ち込んで右足でシュートすることで生まれた。

 このときに対峙したセネガルのDF陣からすると、乾は完全に「何をしてくるか、わからない選手」だった。

 ベルギー戦で、一時は点差を2点に広げる圧巻のミドルシュートも、香川がボールコントロールをしてタメをつくった瞬間、中央のスペースにスッと入り込んで、ヒールパスを受けると、一度時間を止めてシュートなのかパスなのか、ドリブルなのかを相手DFにちらつかせてから、あの右足の無回転シュートを繰り出した。

 30歳にして初めてのW杯で2得点1アシストの大活躍。海外メディアも乾を賞賛し、「日本のベストプレーヤー」と評した。

 そのなかには「なぜここまでの選手がこれまでW杯に出場していなかったのか」という声もあった。その声に山本はこう言及した。

「中学時代、高校時代のときと同じで、プロになっても日本は『どういう選手が良いのか』という判断基準や選考基準がまだ成熟していないと思う。日本国内の評価と、海外の評価が全然違うのが現状です。今はインターネットメディアが発達してきたことで、すぐに海外の反応がわかりますが、乾の海外での評価はもともと高かったのです。

 比較的小さいクラブとはいえ、スペインのリーガエスパニョーラで3年間もスタメンを張って、実績を積み重ねてきました。その偉大な選手に対して、『なぜそんなに過小評価するのか』とずっと思っていた。乾は普通に公式戦でFCバルセロナやレアル・マドリード、アトレティコ・マドリードといった名門と対峙しているから、W杯といえど、セネガルやベルギーと対峙したところで、“いつも通り”の試合です。もちろんW杯はビッグマッチですが、それはシチュエーションがそうさせているだけで、極端にいえば日常のレベルで戦っているレベルです。乾自身も大会前から『普通にやれる自信がある』と言っていました。30歳で初のW杯ではあるけれど、乾にとってはまったく問題がない『日常』でした。ただ、今まで正当な評価を受けていなかっただけです。乾はそれだけ『日本で評価されにくい選手』だったのです」(同)

 評価されにくい選手に、山本氏は最高の評価を与え、3年間長所を磨き続けた。その結果、卒業から12年の時を経て、ロシアの地で躍動した。
(文=安藤隆人/サッカージャーナリスト)

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