二階堂ふみとKAT-TUN・亀梨和也がダブル主演を務める連続テレビドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』(フジテレビ系)の第6話が16日に放送され、平均視聴率は前回から0.1ポイント増の6.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。7.8%だった第1話を除けば6%台と低迷しており、視聴率上昇の兆しは見えないままだ。
このドラマは、『姫川玲子シリーズ』と呼ばれる誉田哲也著の小説を映像化したもの。同シリーズは以前に竹内結子主演でドラマ化されており、今回の『ストサガ』では、竹内版で描かれたエピソードと今回初めて映像化されるエピソードの両方が描かれることになっている。
第5話までは、竹内版ですでにドラマ化されたエピソードをもう一度繰り返す内容だったが、第6話にしてようやく「初映像化作品」が放送された。竹内版では描かれなかった原作エピソードを題材とした作品という意味だ。これまでは竹内版と比較されることが多かっただけに、今シリーズ(二階堂版)の真価が問われる回となった。
そんな第6話のストーリーは、ひたすら重かった。峰岡里美(黒沢あすか)という中年女性が路上で若い男に刺され、近くにいた会社員の男女も巻き添えを食って死傷してしまう。当初はありきたりな通り魔事件と思われたが、里美には今年で18歳になるはずの重樹という名の息子がいたことが判明する。だが、重樹には小学校に入学した記録がなく、現在の行方もわからない。
一方、里美が昔住んでいた部屋を捜索した姫川(二階堂)らは、押し入れから幼児の白骨死体を発見する。姫川は死体が重樹ではないかと推測するが、調べてみると年齢が合わないことがわかった。菊田は部屋の状況から、重樹のほかにもうひとり子どもが暮らしていたのではないかと推理した――という展開だった。
最後に姫川らがたどり着いた真相は、幼い頃に里美に捨てられた重樹が復讐したというものだった。里美はおよそ人の血が通っていないような母親で、重樹の弟を産んだはいいが出生届も出さずに放置して死なせてしまう。しかも「お前が殺した」と重樹を責め立て、公園に置き去りにして行方をくらます。成長した重樹はやっとの思いで里美を捜し当てるが、里美は「ヒロ(重樹の死んだ弟)のことなんてどうでもいいだろ。気味悪いから二度と来ないでくれる?」と吐き捨てた。思いつめた重樹は、「ヒロ(弟)に謝れ」と叫びながら母を刺したのだった。
あまりにも母親がクズすぎて気分悪いし、救いもあまりない。同情すべき境遇があるとはいえ、重樹は関係ない第三者を巻き込んで命まで奪っており、殺人犯になってしまった。かといって、里美に復讐できたわけでもない。事件解決後、姫川は「あの時せめて峰岡里美が死んでいればって考えてしまった」と菊田(亀梨)に打ち明けた。同じように感じた視聴者は少なくなかったはず。せめて里美が過去の所業で罰せられればいいのだが、彼女が犯した遺棄致死や死体遺棄の罪はすでに時効であり、裁かれることはない。最近の刑事ドラマによくある「モヤモヤ系」の結末といってよい。
だが、視聴者の反応は決して悪くない。「最近の社会問題を盛り込んでいて考えさせられた」「毒母と不遇な兄弟の不条理に泣いた」「実際にこんな親がいそうで、同じ子を持つ身としてはむごい話に心が痛んだ」など、感情や心を揺さぶられたという声も多い。親による子の虐待やネグレクト、無戸籍児童など、この日本において現実にどこかにある問題を凝縮したことで、「ひどい話だけどあり得ない話じゃない」との感覚を視聴者に持たせることができたからだといえよう。
ラストシーンで姫川は、「彼女(里美)のことを1ミリも理解できないわけじゃない」と菊田に語った。子育てが思った以上に大変で育児放棄してしまうのは、案外特別なことじゃないかもしれない、と彼女は言う。この台詞により、このエピソードは「世の中のどこかにあり得る話」から、「誰にでも(自分にも)あり得る話」になった。だからこそ、ただ単に「あの母親クソだったな」という感想だけで終わらずに、社会問題として考えさせられる人が多かったのではないだろうか。
この後姫川は、「菊田は知らないでしょ? 私のそういう怖いところ」とも話す。これに対して菊田は「そうじゃないところはいっぱい知ってますから。だから主任は大丈夫です」と答えた。劇中での姫川と菊田の絡みは決して多くないため、「お前は姫川の何をそんなに知ってるんだよ」と菊田にツッコミを入れたい気持ちはあるが、2人の関係性を描く意味ではなかなか良いシーンだった。何しろこのドラマは一応、二階堂ふみと亀梨和也のダブル主演なのである。その2人の関係性がしっかり描かれていけば、後半のエピソードはますますおもしろくなるはずだ。
次回第7話は、2013年に映画化された原作エピソード「インビジブルレイン」を再び映像化する。映画版は「名作」と評する声が多いだけに、視聴者の期待値はかなり上がるはずだ。期待を上回る作品を見せてほしい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)