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知ってるようで知らない……薬局の歩き方・クスリの選び方 第6回

ダイエットサプリ販売のウソ「効果ないのに薬効を宣伝」

文=へるどくたークラレ

 またどこかのエラい大学の先生が出てきても、あくまで協賛しているだけ。貧しい研究費を補うべく、バイトをしている場合が大半です。実際に、その先生が出した論文を精査していくと、大半は「微妙」となっていて、劇的な効果が認められているものは見たことがありません。

●余分な油を消化させない!? キトサン系

 ここまで読んで「お茶でダイエットできないのは、なんか分かる気も……」という人もいるかもしれません。でも、テレビCMなどで、油に魔法の粉を注ぎ込めばあっという間にカチカチの塊になってしまうという様子を見せられると、これは油物が大好きな私に天恵! とばかりになってしまう人も多いかもしれません。
 
 さて、それらの油を固めてしまう魔法の粉の正体は、キチンキトサンといいます。動物性食物繊維でありながら、産業廃棄物だったカニの殻をバイオマス原料として研究して生み出された成分です。食物繊維なので便秘を改善する働きがあります。また食品添加物としてテクスチャ改善などに幅広く使われている便利な素材です。

 さて、このキトサンに脂肪吸収を邪魔する効果があるのか……ということに関しては、はっきりとNOという結論が出ています。

 というかそんな研究報告を見るまでも無く、CMでやっている油が固まる実験の続きをやればいいのです。要するに油を吸って固まったものに、お腹の中で出る胃酸と似たような成分の塩酸をかけ、膵液と同じアルカリ条件にしてあげればよいのです。結論としては、胃酸で速効キトサンは油を手放し、油がみるみる浮いてきます。しかも実際にキトサンに油を吸わせるのはなかなか困難で、CMのような状態にはなかなかならないのです。むりやり練り続けてようやく油と塊ダンゴのようになりますが、胃液と同じ濃度の塩酸を入れるだけでサラッと分解、元の木阿弥です(笑)。

 ちなみに本当の油吸収阻害剤という薬剤は存在します。

 現在はまだ日本では認可されていませんが、アメリカではゼニカルという名前(日本では武田製薬がセチリスタットという名前で販売予定)で、病院で処方されています。

 ガッツリとしたリパーゼ阻害剤で、油の吸収自体をバンバン阻害し、最大2割の油を未消化で外に出します。しかしこれがくせ者で、要するにひどい油性の下痢を起こすわけです。また放屁のときにも油が漏れだし、生理用ナプキンでもつけていなければ日常生活に支障をきたしまくるという、なかなか極悪なクスリです。油を未消化で外に出すとは、そういうことなのですね。

 そしてこのクスリだけで、食生活を変えずにどれだけ痩せるかというと……1年間にたったの1〜2キロという報告があります。常におなかが張り続け、おならと共に悪臭のする油をぶちまけるような生活を1年続けて1〜2キロしか痩せない……これが医薬用ダイエット薬の限界で、それすらも及ばないのがサプリメントです。キトサンは便秘解消程度のモノなので、高い金を出して買う必要はないでしょう。

●メラメラパワーで燃焼力! ってホント!?

 燃焼力アップ……という謳い文句で売られるのが、ショウガやトウガラシを使ったサプリ。確かに基礎代謝をアップさせれば、消費カロリーは膨大になります。実際に筋肉質の人の消費カロリーは高く、それ故に、体温も高く薄着で平気なのです。

へるどくたークラレ

へるどくたークラレ

覆面の不良科学屋。添加物を駆使した食欲の失せるカラフルな料理やら、露悪的で馬鹿げた実験を紹介していく、『アリエナイ理科ノ教科書』の著者、SFやミステリーの設定やトリックの監修も務める。こっそり大学でも教養課程で科学を教えていたりする。過去の連載をまとめた『薬局で買うべき薬、買ってはいけない薬』は好評発売中。公演やテレビ出演なども多数。無料のメールマガジンも配信している。

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