結婚生活は、他人同士だった男女が一緒に暮らすものだけに、お互いに不満を持つ夫婦も多いことだろう。夫婦生活が長くなればなるほど、その不満はさらに大きくなっていく。
『夫に死んでほしい妻たち』(朝日新聞出版)の著者で労働経済ジャーナリストの小林美希さんによると、特に妻が抱える不満は夫の比ではないという。心の奥底で、夫に「死んでほしい」と思っている妻が非常に多いのだ。
妻にとって離婚より死別のほうが得?驚愕の理由
『夫に死んでほしい妻たち』は、家事や育児における妻の「してほしい」と夫の「しているつもり」の間にある大きな溝を浮き彫りにし、長年怒りをため込んだ妻が「死ねばいいのに……」と夫の早死にを望むという、なんとも恐ろしい内容のルポルタージュだ。
小林さんが本書を執筆したのは、前著の『ルポ 母子家庭』(筑摩書房)でシングルマザーたちを取材したことがきっかけだったという。
「たくさんの女性を取材してきましたが、『離婚したくてもできない』という妻の数はかなりのものになります。そんな女性の多くは、『夫と離婚したい』と思いながらも、収入面の不安や子どもの教育などの問題から、離婚に踏み切ることができない。すると、どうなるかというと、『どうせ夫と離婚できないのなら、いっそのこと死んでほしい』という結論にたどり着くわけです」(小林さん)
「住宅ローンを組むとき、金融機関の融資担当者が『ご主人が亡くなられた場合を考えて、ローンの契約期間は少しでも長くしておいたほうがいい』という営業トークをすることがあるそうです。ローンの名義人(=夫)が団体信用生命保険に加入していれば、仮に返済途中で死亡した場合、残りの返済は免除されるからです。さらに、夫が死ねば遺族年金や生命保険も入るので、当面の生活には困りません」(同)
だから、妻たちは「離婚のわずらわしさを考えたら、絶対に死別のほうが得だ」と口をそろえて言うのである。
こんな夫が妻から「死んでほしい」と思われる
とはいえ、「夫に死んでほしい」と願うのは物騒で極端な結論であることは否めない。妻たちは、なぜこんな考えに行き着くのだろうか。小林さんは「日本の社会構造に原因がある」と分析する。
『夫に死んでほしい妻たち』 家事や育児で、妻の“してほしい”と夫の“しているつもり”の差は、あなたが想像しているよりもはるかに大きい。毎朝子どもを保育園に送る。週に一度は料理をつくる。それだけで自信満々な夫を、妻はどう感じているか? やがて、怒りを爆発させることにも疲れた妻は、一人つぶやく。「死ねばいいのに…」世の中たちを戦慄させる、衝撃のルポルタージュ!