一昨年の「改正道路交通法」の施行以降、「専用レーンを守れ」「自転車損害保険に入れ」「ベルは無やみに鳴らすな」など、国内のサイクリストにとっては思わず肩身が狭くなるようなマナー面での話題が続いている。
しかし、日光を浴びて戸外を走り、全身に風を受けながら地形の変化も体感できるサイクリング本来の効能は、規制強化によってなんら半減するものではない。今回はそんな、日々のサイクリングで気持ち良い汗をかいている健康志向派の皆さんを勇気づける新しい知見を紹介しよう。
心疾患や糖尿病の発症リスクを低減、膝に問題を持つ人も筋力強化
まずは「日常の移動手段としては、可能な限り自動車よりも自転車を使うべきだ」と強く力説する健康専門家、米ペンシルベニア州立大学のアラン・アデルマン氏のサイクル万能論から拝聴しよう。
「何よりも、自転車を漕ぐ運動は心血管の健康状態を高めるのに適しています。定期的なサイクリングは体重が増えるのを防ぎ、ひいては心疾患や糖尿病の発症リスクを低減するのに役立つ」
心血管に「好影響」をもたらす運動量の目安として、20分間以上の中強度運動を週3~5回程度行うことが推奨されている。アデルマン氏によれば、自転車に乗ってさまざまな地形を走る日々のインターバルトレーニングは「この推奨運動慮に相当する」そうだ。
同大学のフィットネスセンターに所属し、運動生理学を専門とするデボラ・トレジア氏が、次のように補足する。
「たとえ勾配が緩やかな坂であろうとも、自転車に乗って坂を上ったり下ったりする運動は体力や筋力アップなどの面でも身体を鍛えるのに適しています。それこそ最近人気が高まっている高強度インターバルトレーニングになる」
一方、ただがむしゃらに走り回るだけでなく、自転車の特性を生かしながら「ゆっくりと走る」低強度の運動も侮れず、アデルマン氏もトレジア氏も「変形性膝関節症などを抱える人たちにも適している」と口を揃える。
つまりノーインパクト活動にして、膝の摩擦も最小限に抑えられるサイクリングの場合、膝に問題をもつ人でも下肢の筋力強化が可能というわけだ。