ビジネスジャーナル > ライフニュース > 蚊が吸った血液のDNAから犯人逮捕  > 2ページ目
NEW

犯罪現場で蚊が吸った血液から犯人を特定…判定精度はほぼ100%、現場にいた時刻まで判明

文=佐藤博
【この記事のキーワード】, ,

判定精度は4兆7000億人分の1人という高精度

 吸血蚊からDNA型を判定する――。この発想は実に興味深い。国内外で自身に蚊を吸血させてDNA型を行った研究はあるが、今回のような犯罪抑止をめざした系統的な研究は少ない。

 ところで、吸血蚊からDNA型をどのように判定したのだろうか。その流れをもう少し説明しよう。

 まず、卵から専用飼育箱で飼育した蚊(アカイエカとヒトスジシマカ)を1匹ずつ、透明な円形プラスチックカップに入れる
→開放部を薄手のパンストで覆う
→パンスト部分を被験者の腕に当てる
→蚊がパンストを通して十分吸血した段階で、カップを腕から離す。

 パンスト部分をショ糖溶液で湿らせたガーゼ片で覆う
→設定された経過時間(0、1、2、3、4、6、8、12、18、24、36、48、72時間)後に、カップをジエチルエーテルで飽和したビニール袋に入れて殺虫する
→直ちに実体顕微鏡で蚊を撮影する
→時間経過とともに吸血された腹部の血液が次第に減少する
→腹部の先端から徐々に卵巣が成熟する
→72時間後、ほぼすべての血液が消化され、腹部が卵巣で占められる。

 次に、多色の蛍光標識プライマーを用いる「マルチプレックス法」によって、吸血した血液のDNAの低分子濃度を抽出し、DNA型を判定する
→血液の消化状態によって、吸血後の経過時間の推定を行う

 このような流れになる。

 吸血した血液のように低分子化したDNAを解析できる「マルチプレックス法」なら、一卵性双生児を除き、ほほ100%の高確率で個人を識別できる。その識別精度は4兆7000億人分の1人という高精度だ。となれば、少々蚊に刺されて怒るのも大人げない気がする。火のない所に煙は立たない。蚊のいない所に犯人は逃げきれないのだから。

 とはいうものの、「デング熱」や「日本脳炎」などによって毎年100万人以上が命を落としている今、世界中で蚊の撲滅作戦が進んでいるという一面もある。
(文=佐藤博)

佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

シリーズ「DNA鑑定秘話」バックナンバー

※ 初出/健康・医療情報でQOLを高める「ヘルスプレス」

犯罪現場で蚊が吸った血液から犯人を特定…判定精度はほぼ100%、現場にいた時刻まで判明のページです。ビジネスジャーナルは、ライフ、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!