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炭水化物の摂取量が増えると死亡率も上がる?日本糖尿病学会推奨の食事に矛盾

文=吉田尚弘
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「炭水化物の摂取量の増加が全死亡率を上げる」という臨床研究が「ランセット」誌に掲載の画像1「炭水化物の摂取量の増加が全死亡率を上げる」という研究が「ランセット」誌に報告(depositphotos.com)

 炭水化物(糖質)の摂取過多が、2型糖尿病をはじめとするさまざまな病気の原因であり、糖質摂取を控えるべきということを、ここでは書いてきました。特に日本糖尿病学会が推奨する60%の糖質摂取+カロリー制限は、食事療法としてはおかしいと私は考えています。

 しかし、エビデンスがないというのが、これまで糖質制限に反対する人々の言い分でした。特に「信頼性の高い前向きコホート臨床研究がない」「欧米人を対象にしたデータしかないから日本人ではわからない」との主張をよく見聞きします。

 ところが、8月29日に「ランセット」誌のオンライン版に「炭水化物の摂取増加で死亡リスク上昇」という大規模研究結果が掲載されました。今回はこの研究について紹介します。

先進国から途上国まで18カ国で「糖質」について調査

「PURE試験」と名付けられたこの研究では、高所得国(カナダ、スウェーデン、アラブ首長国連邦)、中所得国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、イラン、マレーシア、パレスチナ自治区、ポーランド、南アフリカ、トルコ)、低所得国(バングラデシュ、インド、パキスタン、ジンバブエ)の計18の国・地域で調査が実施されました。

 欧米の先進国のみで行われた過去の研究とは異なり、さまざまな経済発展程度の国々で幅広く調査を行ったのが最大の特徴です。

 研究では、これらの国々で、2003年1月1日時点で35~70歳の13万5335例を登録し、食事の摂取量を「食事摂取頻度調査票(FFQ)」により調査し、そこから2013年3月31日まで、平均値で7.4年間も追跡調査をしています。

 FFQで検討した栄養素は、糖質(炭水化物)、脂質(総脂質、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸)およびタンパク質の摂取量で、摂取エネルギー比率に分類して検討されました。

 平均摂取量で炭水化物の摂取量は次の5群(46.4%、54.6%、60.8%、67.7%、77.2%)、脂質も5群(10.6%、18.0%、24.2%、29.1%、35.3%)、たんぱく質も5群(10.8%、13.1%、15.0%、16.9%、19.7%)に分類されました。

 その調査結論は、次の通りでした(Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study Lancet (London, England). 2017 Aug 28; pii: S0140-6736(17)32252-3.)。

①炭水化物の摂取量が多いほど全死亡リスクは増加し(60%を超える群では高かった)、逆に脂質の摂取量が増えると全死亡率が低下する相関が見られた。

②脂質は総脂質および種類別のいずれも摂取量が多いほど全死亡リスクは低下した。

③飽和脂肪酸の摂取量が多いほど脳卒中のリスクが低下し、心筋梗塞または冠動脈疾患との関連性は認められなかった。

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