近年、長らく“住みたい街”の王者に君臨していた東京・吉祥寺に異変が起きている。吉祥寺といえば、新宿駅・渋谷駅まで各15分と交通アクセスが抜群によく、駅前は23区レベルの繁華街として栄えている。それでいて、駅から少し歩けば自然豊かな井の頭恩賜公園が広がり、大学も多く立地しているので文教都市としての趣が強い。さらに、若者が多いため文化の発信地としての側面もあった。そういった住みよい環境から、不動産業界では人気ナンバーワンの街とされてきた。
ところが、近年は順位が急下降しているのだ。その原因は、なんといっても吉祥寺の高級住宅街化が挙げられる。今では首都圏の市町村といえども少子高齢化の問題を抱える。他方で、地方から東京都心部へ流入人口は増加しており、東京の一極集中は加速している。10年前から千代田区・中央区・港区といった都心では都心回帰現象も目立つようになり、人気の街は不動産価格が高止まりしている。吉祥寺も例外ではない。
こうした不動産事情と、今般の雇用の非正規化の流れによる低賃金化といった複合的な要因が絡み合い、東京23区の不人気エリアとされたために、割と便利なのに家賃が安かったエリアが脚光を浴び始める。北区・赤羽、足立区・北千住、墨田区・錦糸町、葛飾区・新小岩などは、これまででは光が当たらない“東側諸国”とされてきた。しかし、安い賃料などが魅力的な点が若者から支持されるようになり、最近はこれらのエリアの巻き返しが始まっている。
一方、ファミリー層にとっては東側諸国よりもさらに郊外の魅力的なエリアに居を求めるケースが目立っている。ファミリー層で人気を博しているのが千葉県船橋市だ。特に船橋駅には、JR・東武が乗り入れており、東京の丸の内・日本橋まで電車で30分以内とアクセスは抜群。市内には、ららぽーとをはじめとした大規模商業施設も多数あり、ショッピングをするのにも、休日に家族で外出するのにも困らない。そんな理由から船橋の人気が急上昇しているという。
川崎市=住環境が悪いというイメージ
同様に不動産関係者や都市開発事業者から注目されているのが川崎市だ。川崎市は1980~90年代に出稼ぎ労働者が集まる街として有名だった。競輪・競馬といった公営ギャンブルがあり、さらに居酒屋や風俗店など出稼ぎ労働者向けの娯楽が充実している都市だったことも、ファミリー層からの人気を押し下げる要因になっていた。