子どもを狙った事件が増えていることに伴い、最近は子どもの安全を守るために学校や親が「防犯ブザー」を持たせるケースが増えてきている。とはいえ、「ただ大きな音が鳴るだけ」の防犯ブザーが緊急時に役立つのだろうか。
防犯ブザーといえば、防犯アイテムのなかでも手軽で比較的安価なため、広く世間に浸透しているが、「音が鳴るだけのブザーでは身を守れない」という意見も耳にする。実際、ブザーを用いて犯罪を未然に防げたというケースはあるのだろうか。
「防犯ブザーによって未遂に終わった事件は数多くあります。犯罪に巻き込まれそうになったとき、女性やお子さんは恐怖で声を出せないことが多く、そこで『大きな音が鳴る』だけでも犯罪抑止になります。それに、防犯ブザーは誰でも簡単に操作でき、犯人と距離を保ったままでも有効なので、特にお子さんに持たせるにはオススメのアイテムです」
そう語るのは、セキュアプランナーで防犯アドバイザーの京師美佳さんだ。十分な抑止力が期待できるという防犯ブザーだが、正しい使い方を知っていなければ実力を発揮できない。防犯ブザーが世間的に軽視されているのは、保護者や学校側が配っただけで終わりになってしまい、しっかりとした使い方を教えていないことも原因だという。
「学校で防犯教室を開催するかどうかは各校の判断となり、金銭的な問題などから後回しにされている地域も多いようです。だからこそ、親が責任を持って我が子に身を守る方法を教えてあげることが大切なんです。『危険な状況になったら、すぐに鳴らす』『変な人がついてきてると思ったら防犯ブザーを軽く鳴らして威嚇する』などの使い方を丁寧に教えてあげてください」(京師さん)
不審者は子どもの年齢によって接近の仕方を変えてくるため、一度使い方を教えたからといって満足してはいけない。
「不審者が子どもに声をかけるとき、小学校低学年の子には『君のママが病院に運ばれたからついてきて!』などと感情に訴えかけることが多いようです。高学年になると『私は君のお母さんの職場の知り合いで、君を連れてきてほしいと頼まれている』など、より具体的なエピソードで騙そうとしてくる。だから、年齢に合わせて『知らない人にはついていかない』から『知り合いの○○さん以外にはついていかない』というふうに、お子さんの防犯意識をマイナーチェンジしていく必要があります」(同)
また、新たなビルが立つなど地域の様子が変わるにつれて、安全なエリアも変化していく。頻繁に子どもと通学路を歩いて、親子オリジナルの「安全マップ」を常に更新していくことも重要だ。
防犯ブザーは110デシベル以上が有効
親が正しい使い方を教えさえすれば、高い防犯力を持つ防犯ブザー。選ぶ際のポイントなどはあるのだろうか。
「110デシベル以上の音量が出るブザーを選んでください。110デシベルはパトカーのサイレンなどと同じで、人に不快感を与えるレベルの音量となります。さまざまなデザインのものが売られていますが、そんなに高価ではないので、ぜひ音量にこだわって探してみてください」(同)
しっかりと時間をかけて子どもに防犯意識を持ってもらえれば、1000円もしないような防犯ブザーでも絶大な効果を発揮する。そして、大切なのはアイテムだけに頼らず、普段から親子のコミュニケーションを取ることなのかもしれない。
(文=ますだポム子/清談社)