ハーロックは「エンロール力」「率先垂範力」も○だし、「細心配慮力」もクルーの趣味まで細かく把握しているっぽいので○。しかし、罠が待ち構えていても仲間を助けにいくので「非情合理力」は×。「部下愛育力」も、部下が戦闘中に酒を飲んだりしているので×。「明朗快闊力」も×。「リスクテイク力」はさすがの○、「人間理解力」「使命挺身力」も○。でも、「ビジョン構築力」は「俺は俺の胸の中にあるもののためにだけ戦う」とか言っている時点で×。というわけで、ハーロックはキャプテンなのに、○は6個。
●『ガッチャマン』酷評は、リーダーに問題あり!?
では、映画が酷評されている『科学忍者隊ガッチャマン』 (タツノコプロ/吉田竜夫原作)のリーダー・鷲尾健はどうだろう。退屈な映画を見つつチェックしてみたところ、「エンロール力」「率先垂範力」は○で、「細心配慮力」「非情合理力」は×。「部下愛育力」も、そもそも部下といえるような存在がいないので×。「明朗快闊力」「リスクテイク力」「使命挺身力」は○をあげてもいいが、「人間理解力」「ビジョン構築力」はその若さもあって厳しいだろうから×。と、10項目中5個。
こうしてみると、リーダーにふさわしいキャラクターが全然いないではないか。このままでは、二次元作品を嫌悪するお偉方に「ふん、真のリーダーがいない二次元の作品なんて有害にきまってる」なんて言われてしまう可能性がなきにしもあらずだ。何かほかに、リーダーの素質があるキャラクターはいないか……。そうだ、あのお方がいるではないか。
●『ジョジョ』DIOは意外にも……
と、いうわけで、『ジョジョの奇妙な冒険』 (集英社/荒木飛呂彦)より、圧倒的なカリスマ性と人気を持つDIOにご登場願おう。彼は、どれだけ「リーダーの条件」が当てはまるのだろうか。
まず、「エンロール力」は抜群の○だろう。その圧倒的なカリスマ性で、現実世界でも多くの人を魅了しているし、数々の人間を吸血鬼やゾンビに仕立て、第6部では、敬虔な神父だったプッチまで引き込んだ。対して、「率先垂範力」は部下のほうに率先して物事に当たらせている感じなので×。一方、「細心配慮力」はあのパラノイアックな細かさだから、◎をあげたいくらいにありありだ。「非情合理力」はいわずもがなで○。というか、もう非情さを取ったらDIOとはいえない。
次は 「部下愛育力」だが、第3部でとくにメリットがなさそうなヌケサクのことを仲間にするなど、意外にある気がする。「明朗快闊力」も大学時代、演技とはいえ明るい好青年をやっていたわけだし、ギリギリ○をあげておこう。「リスクテイク力」は、性格的にあの手この手を使ってリスクを人に押しつけそうなので×。「人間理解力」はその生い立ちから、人間の汚い部分も見極めているので○。第6部で「天国へ行く方法」をプッチに示したことから「ビジョン構築力」にも○をあげたい。「使命挺身力」もこの世の覇者になるという使命感に燃え、そのために敵に立ち向かっているから○。
さて、DIOに当てはまる「リーダーの条件」は10項目中8個だった。ということは、社長はDIO様に決定!
でも、彼を社長にすると、ミスをした場合に、ちょっとした暴力どころか、殺される可能性だってあるから、超絶ブラックな会社になること間違いない。
(文=オンダヒロ)
『リーダーは誰だ?』 合弁失敗、開発遅延、部下の反乱、セクハラ騒動……リアルなビジネス小説として描かれる、社内トラブルを通して、リーダーの条件を学ぶことができる話題作。『リーダーは誰だ?』(あさ出版/長尾一洋)