「猫が顔を洗うと雨」「ツバメが低く飛ぶと雨」「富士山に笠雲がかかると雨」というように、日本には昔から言い伝えられてきた雨に関することわざがある。天気予報がなかった時代には、山にかかる雲の様子や風向き、生き物の行動の変化から天気を予想していた。このように五感を使って天気を予想することを観天望気といい、全国各地で伝えられてきた。では、この天気のことわざ、信ぴょう性はどうか?
「猫が顔を洗うと雨が降る」は本当か?
『天気のことわざは本当に当たるのか考えてみた』(猪熊隆之著、ベレ出版刊)では、全国330山の天気予報を運営する国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンの代表取締役であり、山岳気象予報士の猪熊隆之氏が、全国各地に伝わる代表的なことわざを紹介し、そのことわざが言い伝えられてきた経緯や信憑性について検証する。
「猫が顔を洗うと雨」ということわざは、なぜ言い伝えられてきたのか。猫の顔には50~60本のヒゲがある。このヒゲにはたくさんの神経が集中していて、わずかな空気や音の振動を感じ取ることができるのである。
風や湿度の変化も感じ取ることができ、雨が近づいて湿度が高くなると、気圧や湿度が変化することへの不安を取り除くために、猫は顔を洗うという説がある。また、雨が降る前には湿度が高くなるので、猫の顔についたノミが活発に動き出して顔がかゆくなるので、顔をよくこするようになるという説もある。
ただ、汚れなどがついて体を清潔にしいたいときなどに、顔をなでたり、毛づくろいをしたりするグルーミングを行うことがある。雨以外の理由で顔をなでることも多いようだ。結局のところ、雨が近いから顔をなでているのか、それとも他の理由で顔をなでているのかは、残念ながらわからないという。
「ツバメが低く飛ぶと雨」はどうだろう。ツバメは蛾やハエ、ハネアリ、アブなどの飛んでいる虫を食べている。虫の羽は雨を弾くようにできているが、雨にはできれば打たれたくないもの。そこで気圧や湿度の変化などから「雨が近づいているな」と感じると、葉っぱの裏などにすぐ隠れられるように、地面近くを飛ぶようになり、それを追いかけるツバメの低く飛ぶという説がある。猪熊氏の実体験から、このことわざは意外と当たることが多い気がするという。
天気のことわざには、科学的な根拠に基づいているものあれば、単なる迷信に過ぎないものある。本書から天気のことわざのあれこれを知ることで、日常の中で空や雲の変化、生き物の行動を見て天気の変化を楽しめるようになるはずだ。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。