ヨードうがい薬でうがいをすると風邪をひきやすくなる?水道水が一番効果的?
次に「水うがい群」ですが、同17.0人でした。これは、「特にうがいをしない群」に比べて、明らかに発症率が低いといえます。やはり、うがいによる効果が現れたと考えられます。
最後に、「ヨード液うがい群」ですが、同23.6人という結果でした。つまり、「水うがい群」よりも風邪の発症率が約1.4倍も高く、「特にうがいをしない群」とほぼ同じ結果となったのです。
●常在菌が風邪ウイルスの侵入を防ぐ
では、なぜこのような結果になってしまったのでしょうか? 調査を行った川村教授は、「ヨード液がのどに滞在する細菌叢を壊して、風邪ウイルスの侵入を許したり、のどの正常細胞を傷害した可能性が考えられる」と分析しています。のどの粘膜にはもともとさまざまな種類の細菌(常在菌)が棲みついていて、いわば人間と共生関係の状態にあり、常在菌は通常病気を起こすことはありません。むしろ、風邪の原因ウイルスや病原菌などの侵入を防いでいるのです。
ところが、ヨウ素が作用すると、それらの常在菌が減ってしまいます。そこに、風邪の原因ウイルスが侵入してくれば、それだけ感染が容易になってしまうわけです。また、のどの正常細胞が傷害されれば、風邪ウイルスが感染しやすくなります。その結果、風邪をひきやすくなるというわけです。
なお、「水うがい群」が風邪を予防する効果が高かったことについては、「水の乱流によって、ウイルスそのものか、ほこりの中にあってウイルスにかかりやすくするプロテアーゼという物質が洗い流されること、また、水道水に含まれる塩素が何らかの効果を発揮したことなどが考えられる」と、川村教授は分析しています。
水道水の場合、細菌などの増殖を防ぐために、塩素が含まれています。それは、蛇口から出た水に0.1ppm(ppmは100万分の1を表す濃度の単位)以上含まれていなければなりません。塩素は殺菌力が強く、細菌ばかりでなくウイルスにも作用してその活動を抑制するようです。
これからは水道水でうがいをするようにしてください。そのほうがお金も手間もかかりません。
(文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト)