近年、人工知能(AI)の研究開発が盛んだ。
今年11月、グーグルは自社開発のAIソフト「テンソルフロー(TensorFlow)」を無償公開することを発表して話題になった。「テンソルフロー」は同社の音声検索や写真検索サービスで使われており、オープンソースとしてプログラムの設計図を公開することで、外部の企業や研究者が自由に利用や改良ができるようになる。これにより、グーグルはAIの分野でも他社を圧倒しつつあるといわれる。
また、そのほかにも、フェイスブックやマイクロソフト、IBMなどの世界的なIT企業がAI開発に名乗りを上げている。日本でも、トヨタ自動車がAI研究を手がける新会社をアメリカのシリコンバレーに設立、今後5年間で約1200億円の投資を行うことを明らかにしている。
12月11日には、テスラモーターズCEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏など、IT業界の著名人が10億ドル(約1200億円)の寄付をすることで、AIの推進を目的とする研究組織「OpenAI」が創設された。
OpenAIは、「人間レベルのAIが、いつ実現可能なレベルに達するかを予測するのは困難だ。そのレベルに達した時に、良い成果を自己利益よりも優先できる、強力な研究機関が存在することが重要となる」としている。
我々の未来を変え得る可能性を持つAIとは、いったいどんなものなのだろうか? 当サイト連載「ビジネスのホント」および『ビジネスをつくる仕事』(講談社)著者の小林敬幸氏に聞くと、「AIの進化によって社会が大きく変わり、『世界がAIに征服される』『仕事を奪われた失業者であふれる』などといったことはないだろう。しかし、我々の生活と仕事に少なからず影響が出るのは間違いない」という答えが返ってきた。AI技術の特徴について、小林氏は以下のように語る。
「今、話題になっている最新のAI技術は、これまでのコンピュータと何が違うのだろうか。また、AIは人間に比べてどこが優れていて、どこが劣っているのだろうか。
現在のAI技術が従来のIT技術と違う点は、自然言語や画像といった『非構造化データ』を扱えることだ。売り上げデータや製造ラインにおけるパラメータのような、体系的に分類された数字の構造化されたデータではなく、あいまいで、クリアに分類するのが難しい非構造化データを上手に扱うことができる。
さらに、新しいAI技術の特徴は、『機械学習』と『深層学習(ディープラーニング)』ができることだ。機械学習とは、先生がいなくても、特定用途のアルゴリズムを教え込まなくても、自分だけで能力を高める能力である。深層学習は、物事の特徴を自分で抽出して、概念化する能力のことだ」