AIの特徴から生まれる3つのメリット
小林氏によると、従来のシステムは「中学生が英語を勉強する方法」に似ているという。中学生が英語を学ぶ時、与えられた単語のデータベースを覚え、先生から「文法」という構造とアルゴリズムを学び、徐々に習得していく。
これに対して最新のAI技術は、「2歳児が母国語を爆発的に習得すること」に似ているという。いわゆる「言葉の爆発期」を迎えた幼児は、辞書を与えられなくても、文法を教えられなくても、周囲の人間が話している言葉から、母国語を短期間で覚えてしまう。
「幼児は、言葉を覚えて話し出す前に、さまざまなモノを触り、見て遊んでいる。その時期に、柔らかい、丸い、黄色いといったモノの特徴をつかんでおり、すでに概念化ができているわけだ。そこに、大人が、『それ(=黄色くて丸くて柔らかくて食べるとすっぱいもの)は、みかんだ』と教えると、すぐに『みかん』という言葉を覚えてしまう。言葉の爆発期の幼児が、1日に多くの単語を話せるようになるのは、すでにさまざまなモノの概念化ができているからである。
また、最新のAI技術の特徴である『非構造化データの扱い』『機械学習』『深層学習』を組み合わせると、次のようなメリットがある。
(1)インターネット空間にある情報を上手に徹底的に使う
ネット上にある大量の情報を学習して、概念化を深め、上手に使うことができる。IBMの『ワトソン』という質問応答システムが人間のクイズ王に勝利したことがあるが、これは『Wikipedia』などネット上の情報をベースに学習を重ねることができたからだ。
(2)異常値の検出
作動中の機械から取得できる、さまざまなデータから異常値を検出し、故障の予測をして、予防処置を促すことができる。また、繁華街などで異常な動きをする人間を特定して、犯罪者の発見に役立てることもできるだろう。
(3)中立性
これは、従来のコンピュータ技術との違いというより、人間との違いだが、人間の恣意性を排除して、中立的に振る舞うことができる。例えば、検索連動型広告で巨額の広告費をグーグルに払っている企業のウェブサイトであっても、グーグルは検索結果の上位に表示させるといった恣意的な操作を加えていない。それは、あくまでアルゴリズムに基づいているからであり、スポンサーからの政治的プレッシャーも排除しているわけだ」(小林氏)
意外な“ポカ”も多いAI
上記のような特徴とメリットを持ち、部分的にはすでに人間を凌駕しているようにも思えるAIだが、弱点はないのだろうか。小林氏は、「なんといっても、人間の心などについて、共感をもって理解することが苦手だ」と指摘する。