Pさん 3つあります。
(1)「ボーカロイドパッケージ」が必要です。初音ミク、鏡音リン・レン、巡音ルカに歌を歌ってもらうためのソフトウェアです(例:ボーカロイドパッケージ『初音ミク』<定価1万5750円>)。
(2)楽曲を作るのであれば、DAW(Digital Audio Workstation:コンピュータを使用した統合型の音楽楽曲制作ソフトウェア)も必要になります(例:『Music Maker MX』<1万5000円程度>)【註1】。
(3)歌って踊る初音ミクの動画を作りたいのであれば、「ミクミクダンス」という無料ソフトウェアを使うことも可能です。しかし、絵師さんと呼ばれるイラストレーターにお願いして、それを動かす動画のほうが多いようです【註2】。
いずれも体験版がありますので、無料で試すことができます。
ーーそれでも、3万円程度でボカロPを始めることができるのですね。具体的には、どのような手順で、歌を作ればよいのですか?
Pさん まず楽曲を作ってから、歌詞を決めて、歌声を作ることになります。私は、ミクミクダンスなどを使った初音ミクの動画は作っていません。
ーー1曲作るのに、どの程度の期間が必要なのですか?
Pさん 私の場合で、3カ月程度です。もちろん他のボカロPには、1週間で作成する人もいます。
ーーボカロを作るのに、どんな苦労がありますか?
Pさん そうですね。ボーカロイドのキャラクター(初音ミク、鏡音リン・レン等)によって、音域に制限があることに注意する必要があります。常に、最適な音域を考えて、発音の不自然さをチェックする必要もあります。また、キャラクターに応じた曲や詞を考えることも重要です。
ーー作ったボカロは、どのように公開するのですか?
Pさん ニコ動やYouTubeで公開します。リアルタイムで配信される映像を視聴しながら、コメントやアンケートを楽しむことのできる、ニコニコ生放送(ニコ生)で、紹介用のビデオクリップを公開することもあります。また、プールバーなどでのボカロP同士による披露会もあります。
ーー作品のフィードバックは、どのようにもらうのですか?
Pさん ツイッターでのフィードバックが一般的ですね。先ほども説明しましたが、やはりニコ動の影響は大きいです。これが登場する前は、いただいたフィードバックは1年に1回程度しかありませんでしたが、楽曲を投稿した日などは1日数十のツイートや、ニコ動上でのコメントをもらうこともあります。
ーーフィードバックの内容はどのようなものでしょうか? 厳しい批評をもらったようなことはありますか?
Pさん 厳しい内容のコメントをもらったという記憶はありませんが、アドバイスのようなコメントをいただくことはあります。ただ、自分の作品の二次利用で、クオリティの低い作品が出てきたときはがっかりすることもあります。しかし、私もかつて通ってきた道なので、複雑な心境ではありますが、次世代を育てるという意味で「がんばれ」と思うことにしています。
●ボカロでは儲けられない?
ーーボカロで収入を得る手段は、確立しているのでしょうか?
Pさん 基本的には、ボカロは儲からないと思います。もっとも、CD作成費用を回収する程度の金額をいただく場合はありますが、ボカロPをやっている人のほとんどはノンプロで、趣味でやっています。少数ではありますが、プロになる足掛かりと考えている場合もありますし、プロが自分を売り込むために活動しているボカロPもいます。
ーーでは、ボカロPを続けるモチベーションは、どうやって維持しているのですか?
Pさん やっぱりリアクションですね。高い評価をもらえるとうれしいです。また、ボカロP同士のコミュニティで、音楽CDの合作に参加させてもらったり、自分の作品に画像をつけてくれることもとても楽しくて、嬉しいです。
ーーボカロPを続ける上でのデメリットありますか?
Pさん やはり時間が取れないことですね。仕事との棲み分けが難しいことがあります。