いったいどうやって払えば良いのか――。
インターネット上で、ソフトバンク株式会社から送付されてきた不可解な携帯電話料金の請求書の存在が話題になっている。数年前に解約したはずの電話に対して、「0円」の支払いを求める請求書が届いたというのだ。事の発端は16日にTwitterに投稿された次のようなつぶやきだった。
「どういう訳だか2年以上前に解約したはずのソフトバンクから請求書が届いた とても払える金額ではないので明日電話で確認します」(原文ママ、以下同)
投稿には、請求書の写真も添付されていて、そこには驚くべき内容が記されていた。
ご請求年月 2019年12月分
ご請求額 0円
お支払期日 2020年1月16日
投稿者は続けて次のようにつぶやいた。
「とても払える金額ではない件をソフトバンクショップで確認してもらいました
どうやらシステムのミス(?)らしく時々同様の問い合わせがあって原因不明って店員さんに言われました ちなみに料金の滞納には一切なっていないと確認も出来たので安心しました笑 」
放置すると「延滞料」が加算される可能性も
一見すると、単なる笑い話にも見える案件だが、Twitter上ではこの問題の危険性を指摘する声が相次いでいる。つまり、携帯キャリア側のミスであっても、「滞納している」という扱いになっていることが危険だというのだ。
例えば、請求書の発行代金、滞納に伴う延滞料の存在が挙がっている。支払い額が0円であっても、それを放置すれば毎月請求書の発行代金が発生し、延滞金が加算されるのだ。そうした事例を別の投稿者が明らかにしている。
「ソフトバンクからドコモに乗換えて数ヶ月経ったときのこと。
ソフトバンクから内訳0円の請求書が届く。
↓
意味不明で放置。
↓
数ヶ月後
ソフトバンク『滞納してるよ!払って!』
↓
俺『?』(問い合わせる)
↓
ソフトバンク『内訳0円の請求書発行したからお金払って!』」
「様々な意見ありますが、まぁ契約内容をよく把握しておかなかった自分のせいですね。確かに有料の請求書発行を申込みました。そして解約時には070の番号のことなんか忘れていてメインの番号の方しか解約しませんでした。
まさかメイン番号を割引するための070番号がメイン番号を解約しても契約したままになるなんて想定外でした。当然システム的には月額0円の070を契約中だから請求書が来ます。この0円の請求書を発行すること自体すごくとても謎ですが、契約中というのは紛れもなく事実なので自分が悪いと諦め滞納分を支払い解約した次第です」
背景にある「複雑化する料金サービス」
こうした事例は、ソフトバンクだけなのか。また、どうしてこうした不可解な請求が起きてしまうのか。スマホ評論家の新田ヒカル氏は次のように解説する。
「消費者目線とキャリア目線の2つから、この問題を考えていきたいと思います。0円の請求に請求書の発行代がかかっているとします。消費者目線では、払わないものだし、それが請求書で発行されるということ自体が不自然に思うのは当然だと思います。
一方で、ソフトバンクや他の携帯キャリア各社の目線から考えると、請求額が0円でも『請求書を自動的に発行する』契約を消費者と結んでいる場合、発行しないわけにはいかないという事情があります。毎月契約内容を請求書の書面で確認するユーザーの方もいらっしゃるので、0円だったからといって請求書を出さないとクレームにつながるのです。単純な経理ミスなのか、そもそもシステムの仕様上やむを得ないのか、極めて難しい判断が求められることになります。
こうした事案が発生する背景には、携帯キャリア各社の料金プランが多様化し複雑化しすぎている点が挙げられます。例えば、動画配信サービスや『auでんき』といったエネルギー産業とコラボしたものや、NTTドコモの『dカード』のように金融機関と提携したサービスなど、キャリア単体ではなく複数の企業で提供するものが大きな割合を占め始めています。数年前からもっとシンプルな体系にすべきという議論があるのですが、実態はどんどん広がっていく傾向にあります。
また消費者が各種サービスの新規契約や変更する際の窓口も多様化しています。仮に店頭で契約するにしても、紙面とタブレット端末で分かれています。それに加え、インターネット上で行うケースや電話窓口で口頭契約するケースまで、契約そのものを行う『入り口』ですら多様化しているのです。
しかもそれを受け付けるのは店員、電話オペレーター、ウェブ管理者とまたたくさんの人間を介することになります。
その結果、消費者自身が意識的にチェックしていなければ、どのような契約をしているのかわからなくなってしまいます。一番良いのは請求書を発行する前に『0円になりますが請求書を発行するかどうか』を確認することを、サービスのフローの中に組み込むことなのですが、ここまで複雑化してしまうとそれも難しいかもしれません。
結局、最大の自衛策は消費者自身が、今の契約内容をウェブでも紙面でも確認して、請求書の自動発行がどうなっているのか確認するほかないのではないかと思います」
(文=編集部)