(「Wikipedia」より)
これまでも「Suicaと○○は相互利用可能」というエリアはたくさんあった。例えば、JR北海道のKitacaや、福岡市交通局の「はやかけん」、JR九州のSUGOCAのエリアはSuicaで利用できるし、逆にKitacaのカードを使って山手線に乗ることもできた。しかし、KitacaでSUGOCAエリアには入れない、という状況だったのだ。これが3月に変わる。
従来はJR東日本のSuicaを中心にそれぞれが相互利用を可能にしてきたが、3月23日を期して、提携各社間がシームレスにつながるようになる。おおざっぱにいえば、北海道から九州まで、どこか1ブランドのICカードを持っていれば、ずっと乗り継いでいけるということになる。
●すべてがつながるわけではない?
この相互利用についての検討はすでに2010年から行われており、2011年には「2013年春から相互利用開始」と発表されていた。そのたびに「全国交通系ICカード」という言い方をされているため、全国に存在するすべての交通系ICカードが相互利用可能になるように思っている人がいるかもしれない。しかし実際は10種の提携だ。
実は交通系ICカードというのは、かなりの種類がある。今回の相互利用に参加するのは、
・JR各社:Kitaca、Suica、TOICA、ICOCA、SUGOCA
・各地の私鉄系カード:PASMO(首都圏)、PiTaPa(関西)、manaca(名古屋)、はやかけん(福岡)、nimoca(西日本)
となっている。
このほかにも、交通系ICカードはたくさんある。例えば、北海道にはバス用カードとしてドゥカードとバスカードがあるが、これは相互利用に入らない。広島のバスや船で使えるPASPYのエリアにICOCAを持って行けば使えるが、逆にPASPYはほかのエリアで使えないという片道対応だ。このような片道対応になるエリアもいくつかある。
ほかにも相互利用に含まれないカードはかなりあるから、手元のカードがどこまで使えるのか、この機会に確認してみるとよいだろう。もし手元のカードが上記の10種に含まれない人でも、近畿エリア在住の場合にはPiTaPaやICOCAに乗り換えるという手段が使えるかもしれない。PiTaPa、ICOCAエリア内に存在する小規模なエリアのカードは、たいていこの2つに置き換え可能だから、これも考慮してほしい。
また、電子マネーについては少し難しい。上記の10種連携になるうち、PiTaPaだけは電子マネー機能が連携しないのだ。これは決済方法が違っているためだ。旅先での買い物を電子マネーで手軽に済ませたいという人は、少し注意しなければならない。
●しばらくは乗車料金に注意
まれにICカードでの乗車料金計算が間違っていた、というニュースを耳にする。昔のように路線図を見て自分で料金確認をして切符を購入するのではなく、どこへ行くにもカードをタッチするだけで済むせいで利用者側もなかなか気づきづらいが、相互利用開始以降は少し気にしてみたほうがいいかもしれない。
首都圏の私鉄やバスで利用できるPASMOが誕生し、JR東日本のSuicaと相互利用できるようになったのは07年3月だ。この相互利用開始にあたって、検証された利用パターンは実に12億3000万通りだという。首都圏は私鉄乗り入れなども多く、乗り換えや直通運転を含んだパターンを検証しようとするとそれほどの数になるのだ。首都圏だけでこれほどだというのだから、全国相互利用にあたってどれだけの検証が行われたのかは予想もできない。
分母が大きければ、小さなミスの数も増えるだろう。相互利用が始まった最初の頃は少しだけ料金を気にしてみると、安心につながるかもしれない。特定時間のみに走る直通運転路線と私鉄に乗り換えてゆっくり進んだ場合とで料金が違うような場所は、特に気にしてみてもよさそうだ。
なお、相互利用の範囲が広がっても、定期券が3社路線にまたがったものにできないことや、あらゆる乗り換えパターンに対応するわけではないあたりに変化はなさそうだ。
(文=エースラッシュ)