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高橋暁子「ITなんかに負けない」

Clubhouse、早くも利用規約が有名無実化…録音され公開、想定外の問題続出

文=高橋暁子/ITジャーナリスト
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サイト「App Store」より

 音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」が大流行中だ。まだiOS版のみでAndroid版が出ていないものの、連日メディアを賑わせる人気ぶりとなっている。現状は芸能人などが大量に参入しており、ここだけの話が聞けることでも人気となっている。

 ある40代男性は、入浴中もトイレ中も使い続け、「クラブハウスに住んでいる状態」という。「憧れの漫画家さんと直接話せて夢のよう。すべてClubhouseのおかげ」。一方、眠っている間に貴重な話を聞き逃すのが怖くて、ほとんど眠れなくなってしまったという。

 あまりの人気から、Facebookでも対抗となる音声SNSを開発中と報道されている。Twitterでも昨年末より「Spaces」という音声チャットルームのβテストを開始しており、音声SNSへの注目は当分続きそうだ。

 一方、Clubhouseにはさまざまな問題点が指摘されている。改めて3つの大きな問題についてご紹介したい。

データの取扱いは不透明、セキュリティリスクは高い

 Clubhouseではじめから指摘されていたのは、セキュリティ上の問題だ。「セキュリティ的に考えると怖くてできない」という人も少なくなく、利用していても「セキュリティは心配だけれど利用したいから仕方がない」という人もいる。

 2月、独ハンブルクのデータ保護当局は、同アプリの個人情報の扱いを問題視する文書を公表している。「運営会社がルーム内の全ての会話を録音・保存している」と指摘。同時に、個人情報の収集方法にも問題があるとしている。ユーザーが誰かを招待する際はスマホの連絡先データを全てアプリ側に渡す必要があり、運営会社はサービスの利用者以外の個人情報も得るが、データ管理や削除方法については不透明のままだ。このようなデータは、知らぬ間に第三者に利用される可能性もある。

 さらに、米スタンフォード大学の調査によると、同アプリのデータの一部に中国企業がアクセスできる可能性があるという。同アプリにAPIを提供している上海のソフトウェアプロバイダーAgora社に、ユーザーのIDとチャットルームのIDを送信しているというのだ。つまり、Agora社を経由すれば、誰がどのチャットルームにいたかがわかってしまうというわけだ。

 さらに、アカウントも一度つくったら簡単には削除できない点も問題だ。削除ボタンがあるわけではなく、アカウント削除や無効を希望する場合にはメールアドレスを登録の上、support@joinclubhouse.comに削除申請を送る必要がある。しかも、申請が受理されるまでに時間がかかるという声もあがっている。

出会い系利用や情報ビジネスの温床にも

 Clubhouseで興味があるテーマのルームに参加すると新しい出会いにつながることがある。これは楽しい経験だが、一方で諸刃の剣にもなりうる。

 あるルームで初めて会った同士が、「明日会おう」と言っていたという。つまり、すでに出会い系に使われているということだ。次の項で述べる通り未成年も多く参加しており、音声でのやり取りが残らない以上、出会い系被害につながっても証拠も残らない可能性があるのだ。

 すでに誹謗中傷や差別発言などが見られるだけでなく、情報ビジネスや宗教関係とも相性が良いといわれている。海外ではすでに情報ビジネスの温床となっていると聞く。他のSNSではフォロワーがそれほど多くないのに同アプリ内ではフォロワーを多く集め、「一般人が○日でフォロワー☓☓人になったコツ」などとルームを立てて語っているのを見かけることもある。

 話が上手い人が活躍できるSNSだが、逆に話術によって騙されるリスクも出てくるので注意が必要だ。

18歳以下も多く、録音録画される例も

 Clubhouseには利用規約があるが、規約はまったく守られていない。たとえば18歳以上対象とされるが、年齢確認などの仕組みはなく誰でも利用可能だ。「高校生(17)」「高校生、17歳です」「15歳の中学生です」「中学生、13歳です」などというユーザーが多数見つかる状態だ。なんと「8歳の小学生がいた」という声もあがっている。

 大人が18歳以下のユーザーをフォローしたり、話しかけることもできる。実際、「高校生と話せた」と喜んでいる40代男性の話を聞いたことがある。前述のように出会い系にも使われていることを考えると、リスクが高いことは言うまでもない。

 同アプリは、規約で会話の録音や記録を禁じている。ところが、藤田ニコルさんが話していた内容が週刊誌の記事となってしまい、規約が守られていないことが明らかになった。また、YouTubeなどで検索すると、同アプリでの芸能人などの会話が録音・録画された例が多数見つかる状態だ。「規約で禁止されていても、アカウント停止になる程度。スクープがとれるなら自分でもやると思う」とある記者は言う。

 フォロワーを増やすために相互フォローを目的としたいわゆる「フォロー部屋」も禁止されている。ところが、フォロー部屋を名乗るルームは頻繁に立ち上がっており、こちらも特に罰則などもないようだ。規約が有名無実化しているのが現実だ。

合わない人もいるが可能性はたくさん

 この他にも、電話番号を使った招待制のため、思わぬ問題も起きている。SNSでつながる今の時代、電話帳に登録されているのは友だちとは限らず、最新の人間関係を反映させたものではなくなっている。「友だちの多い本名も知らないキャバクラ嬢に招待されてしまった」とか、「縁を切ったはずの元カレや絶交した元友人が表示されて気分が悪い」という話も聞く。

 その他、アーカイブが残らないリアルタイムで聞かねばならないサービスのため、時間を食ってしまい睡眠不足になっている人もいる。

 問題を中心に述べてきたが、Clubhouseが楽しいものであることは確かだ。このサービスが向いている人にとっては、コロナ禍でもリアルコミュニケーションできる貴重な場であり、新しい出会いにつながる場でもあるだろう。

 すでにビジネスに活用している人も出てきている。なかには、ルームでのトークで数十万円の物販につながったという人もいるようだ。ただし、「特に承諾のないまま商業目的で商品またはサービスの売買を広告しまたは販売すること」は規約で禁止されており、注意が必要だろう。

 新しいサービスが、はじめから問題がないということはまずない。リスクもあるが、可能性も秘めていることは間違いない。興味がある方は、リスクに気をつけながら使ってみるのもいいかもしれない。

(文=高橋暁子/ITジャーナリスト)

高橋暁子/ITジャーナリスト・成蹊大学客員教授

高橋暁子/ITジャーナリスト・成蹊大学客員教授

書籍、雑誌、Webメディアなどの記 事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。 SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などが専門。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎) など著作多数。NHK『あさイチ』『クローズアップ現代+』などメディア出演多数。令和 三年度教育出版中学国語教科書にコラム掲載中。


高橋暁子公式サイト

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