家計簿アプリのマネーフォワード、使っているのは女性よりも20代男性?
本連載前回記事では、「アプリの視聴率」を調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーの事業戦略室室長の岡田雄伸氏に、「テレビCMなしでも伸びたアプリ」について聞いた。
後編となる今回は、さらに「20代男性、30代男性で利用動向の割れたアプリ」や話題の「ライブコマース」などについて、引き続き岡田氏の話をお伝えする。
家計簿アプリのヘビーユーザーは20代男性?
岡田雄伸氏(以下、岡田) ユニークな事例として紹介したいのが、家計簿アプリの「マネーフォワード」です。「App Ape」で見ると、利用者は女性より男性のほうが多いです。
――家計簿アプリというと女性ユーザーが多そうなので、意外ですね。ただ、「マネーフォワード」を見ると性別を問わないシンプルなデザインで、テレビCMにはオリエンタルラジオが出演しています。男性の利用を意識しているのでしょうね。
岡田 今回「マネーフォワード」を取り上げたのは、「家計簿アプリでも男性利用が多い」ということだけでなく、利用動向でもおもしろい傾向が見られたからです。
「App Ape」では、「アプリをダウンロードしたけれど、その後使わなかったユーザー(休眠ユーザー)」をはじめ、利用頻度に応じてライトユーザーからヘビーユーザーまで分類しています。
そこで「マネーフォワード」の休眠ユーザーを見ると、30代男性が一番多かったのです。逆に、ヘビーユーザーは20代男性が突出していました。
――「家計簿アプリを使ってみようとダウンロードしてみたけれど、挫折してしまった人」は30代男性が多く、一方、その後もしっかり使っているのは20代男性が突出しているということですね。
岡田 はい。20代男性はお金に対してしっかりしているというか、危機感を覚えているのかもしれないですね。
株価上昇でも投資系アプリは低調?
――多くの人の生活が良くなっているかといえば疑問ですが、日経平均株価を見る限り、今は好景気です。「株価が上がっているから投資系アプリをダウンロードしよう」という動きはあるのでしょうか。
岡田 「グーグルプレイ」の「ファイナンス」の人気アプリのランキングを見ると、トップ10には銀行や家計簿アプリが並び、投資系のアプリは「Yahoo!ファイナンス」のみですね。
ただ、これだけで「投資に積極的ではない」と言い切ることはできないと思います。「App Ape」は、スマートフォンのアプリ利用動向を調べるサービスです。たとえば、ウェブ上で数値を確認していたり投資はパソコンで行う人が多かったり、というのも大きいでしょう。投資系アプリは各社が対応を進めているため、今後は変わってくるかもしれませんね。
異色の子育て支援アプリ「鬼から電話」
岡田 前回、「テレビCMなしでも伸びたアプリ」として、「アズールレーン」「ガーデンプレイス」という2つのゲームを紹介しました。このほかに、「鬼から電話」(第2弾の「鬼から電話DX」も含め、以下「鬼から電話」と表記)も、テレビCMなしで伸びたアプリです。
こちらは子育て支援アプリで、「悪いことをしたら鬼がやってくるよ!」をスマホで実現させたユニークなアプリです。「あかおに」や「魔女」から電話がかかってくるという仕様で、子どもが言うことを聞かないときなどに利用されます。2012年のサービスを開始以来、根強い人気です。
――「鬼」が本気のビジュアルなのがいいですね。フェイスブックの公式ページを見ると「1000万ダウンロード突破!!」とあります。
岡田 当社のオウンドメディアで「鬼から電話」の利用時間を調べましたが、午前7時、正午、午後9時にピークが発生しています【※1】。「食事時間中や就寝前に子どもがなかなか言うことを聞いてくれない」というときに「鬼」に来てもらうのでしょう。
――「鬼」だけでなく、戦隊モノのヒーローやサッカーの大久保嘉人選手からも電話がかかってくるようですね。
「メルカリ」も参入した「ライブコマース」とは
岡田 その他のトピックとしては、今年は「ライブコマース元年」といわれています。ライブコマースとは、簡単にいえばインターネットのライブ配信でモノを紹介して売るというECの新しいかたちで、「現代版のテレビショッピング」ともいえます。Candee、メルカリ、mimiTVなどの企業が17年にライブコマースに参戦し、大きな盛り上がりを見せています。
たとえば、ジーユーはアプリ上で「GU CURATORS ROOM」という商品紹介のコンテンツを期間限定(11月30日まで)で配信しています。有名モデルがライブ配信を行い、コーディネートを紹介して購入もできるというコンテンツです。
――ジーユーなら同じ商品を大量に販売できますが、「メルカリ」はフリマアプリなので、一点物のためにその都度動画をつくるのも大変ですよね。「元年」のライブコマースが、今後どのような展開を見せていくのかは注目ですね。
人がフリマアプリにハマる理由
筆者自身、10年ほど前に着なくなった服を「ヤフオク!」で何度か販売したことがある。撮影や落札者とのやりとりなど手間も多く、時給換算すれば150円程度だったと思うが、わずかな金額でも落札されたときは本当にうれしかった。そのため、各種フリマアプリにハマる気持ちはよくわかる。達成感があるのだ。
ゲーム依存の理由のひとつにも「達成感」が挙げられる。レアキャラの獲得、レベルアップ、ステージクリアなどの日常ではなかなか得られにくい達成感が、ゲームでは考え抜かれた絶妙なタイミングで得られる。
しかし、考えてみれば、ゲームに限らずさまざまなネットサービスは達成感がリアルよりもずっと可視化されていてわかりやすい。動画の再生回数、ブログのアクセス数、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の反響や評価の数……フリマであれば金銭まで発生する。
ネットでわかりやすく得られる達成感に比べ、リアルの日常は「悪いことが起きればしっかりわかるが、いいことが起きたところで実感しづらい(そもそも、いいことなどめったに起きない)」という分の悪さだ。
よく、ネット依存の対策として「自然と触れ合う」というプランが見受けられるが、都会で暮らす人にとって「自然と触れ合う」は非日常であり、当日は目新しく、気分も変わるだろうが、それが日常に戻って数カ月たっても大切なものとして残り続けるかどうかという点がある。ネットは何しろリアルの日常よりもわかりやすい魅力があるのだ。
今よりもリアルに費やす時間を増やしたい人は、ネットに比べて代わり映えしない日常に、いかに自力で達成感や喜びを見いだしていけるかが重要なのだろう。そして、そのための工夫をどのくらいできるかがカギに思える。
(文・構成=石徹白未亜/ライター)
【※1】
『「鬼から電話」がかかってくるのは何時?子育てサポートアプリからパパママの実態が垣間見えた』
※2017年12月2日(土)、本連載ライターの石徹白未亜がスマートハウジング豊洲まちなみ公園にて、スマホの利用方法を各人で見直す『スマホデトックスミニフォーラム』を開催します。パネラーはスマホ利用を制限するアプリ『タイマーロックシリーズ』の葭田護氏、長谷川達人氏で、参加者のみなさんと適切なスマホ利用を考えます。詳細はフェイスブックで『スマホデトックスミニフォーラム』で検索ください。
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