アップルは15日(日本時間)、新機種発表会を開き「iPhone 13」「Apple Watch Series 7」「iPad mini」などを公表した。新機種の性能やデザインに注目が集まる一方、インターネット上ではiPhone 13の端子が従来通りの「Lightning」であることに対し、賛否両論の声が上がっていた。同日午前、Twitter上では「Lightning」がトレンド入りした。
iPad miniに“転送速度も速く、他社製品との互換性も高い”などと言われるUSB‐C端子が搭載されることもあり、ユーザーの中には「なぜ(iPhone 13では)Lightningが継続するのか」「Lightningはケーブル高くてすぐ折れてたまらない」などと疑問の声が上がっているようだ。
iPhone 13の端子でLightningが継続されたのはなぜか。また、Lightning派とUSB‐C派に分かれ、ユーザー同士で賛否両論が起こっている背景には何があるのか。スマホ評論家の新田ヒカル氏に聞いた。
新田氏の見解
LightningとUSB‐Cには、それぞれメリットデメリットがあります。まずUSBには、USB-Aや、microUSB-Bなどの規格がありました。パソコンでよく用いられていたUSB‐A は非常に大きく、スマホには不適でした。そこで、スマホにはmicroUSB-Bが採用されましたが、端子の耐久性や“両面挿し“できないなどのデメリットがありました。
つまり、Lightningは開発された当時、USBに比べ明らかに優れた端子だったのです。Lightningの成功を受けて、USB‐Cが開発されました。USB‐Cにもいろいろなタイプが開発されていますが、現在では“両面挿し“もできるし、転送速度が速く、供給できる電流も大きいなど、性能面でも汎用性でもLightningを上回るものとなりました。
Lightningを使っているのはアップル製品のみです。他社がほぼUSB‐Cになりつつある中で、ユーザーが端子の規格を統一してほしいと気持ちはよくわかります。
ただアップル製品のユーザーは、アップルで固めている人が多いのです。iPhoneとiPadを持っているユーザーなら、Lightningケーブルを自宅用、持ち歩き用、職場用など複数持っています。そこでiPadは更新せず、iPhoneを買い替えようとすれば、「こっちはUSB‐Cで、こっちはLightningか……」ということが起こってしまいます。ケーブルを2種類持ち歩かないといけないし、家にも同様に2本ケーブルが必要になってしまいます。アップルユーザーからしてみれば不便なのです。
欧州では充電規格統一の動きも
とはいえ、アップルもどこかのタイミングでUSB‐Cに舵切りしなければいけないのではないでしょうか。欧州議会では充電規格統一決議(編集部注:決議の趣旨はスマホ用ケーブルごみの削減)が昨年、採択されました。アップルも世の中の情勢はわかっていて、今回はiPad miniがUSB‐Cに対応しました。今は“経過措置的な時期”なのではないかと思います。
アップルにとってLightningなどの付属品が貴重な収益源であることは事実だと思います。長さにもよりますが、ケーブル一本で2000円程度します。確かにLightningケーブルは中に入っているチップの質などは非常に高いです。しかし、どうしても1~2年使うと消耗して、ちぎれてしまうことも多いです。1~2年でケーブルがちぎれるたびに2000円ほど支払わないといけないのは、ユーザーとしては納得いかない部分もあると思います。
裏を返せば、そうしてユーザーがLightningケーブルを買い替えることは、アップルの大きな収益源となっているのです。そうしたところが、ユーザーがLightningに対して嫌悪感を示す原因になっているのではないかなと思います。
(文・構成=編集部、協力=新田ヒカル/スマホ評論家)