8月21日、菅義偉官房長官が札幌市内で行った講演会で、国内の大手携帯事業者には競争原理が働いていないと指摘し、携帯電話の利用料金は4割程度下げる余地があると発言したことが、大きな話題を呼んでいる。
菅氏が根拠として挙げたのは、経済協力開発機構(OECD)の調査結果で、日本の携帯料金はOECD加盟国平均の2倍程度であり、主要国と比べても高い水準にあるというもの。また、携帯電話事業への新規参入を示している楽天が、既存事業者の半額程度の料金設定にするプランを明らかにしていることも、既存事業者の定める携帯料金が必要以上に高いことを裏付けているという。
ユーザーにとって携帯料金の値下げはありがたい話ではあるが、同時にサービスの質が下がってしまうのではないかという不安もある。また、市場を見ても、近年勢いを伸ばしている格安スマホ事業者になんらかの影響があることは想像に難くないだろう。
果たして本当に携帯料金は安くなるのだろうか。ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温氏に話を聞いた。
「4割値下げ」の真意は、自民党による人気取りのパフォーマンス
菅氏は今回の発言の根拠としてOECDの調査結果を挙げているが、そもそもこのデータ自体、信頼性が低いと石川氏は指摘する。
「確かにOECDの調査によると、日本の携帯通信費は世界的に高水準であると結論付けられています。しかし、国によって引き合いに出しているデータ容量がバラバラなうえ、なかにはプリペイドのプランを引き合いに出している国もあるため、はっきり言って参考になるデータではありません。
一方、総務省は毎年、東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、デュッセルドルフ、ソウルの6都市における通信サービス状況を調査し、『電気通信サービスに係る内外価格差調査』として発表しています。最新版である平成29年度版を見ると、1カ月に2GBや5GBといった一般的な範囲の通信量であれば、東京の携帯料金は世界的に平均的なレベルであると書かれています。信頼性でいえばこちらのほうが圧倒的に高いので、菅氏の発言は根拠に乏しく説得力がないという印象です。また、日本の場合、ネットワークの品質が非常に良いので、不当に高額というわけでもないと思います」(石川氏)
では、菅氏の発言の真意はどこにあるのだろうか。