ビデオレコーダーは、テレビ番組を録画することで、常時テレビの前にいなくても、目的の番組を好きなときに視聴できる便利なツールだ。しかし、録画予約をしなければ、目的の番組を見ることができないのが最大の問題。この問題を解決するために、現在のレコーダーでは、いくつかの試みがなされており、その代表的なものが、「全部録画」と「自動録画」だ。しかし、現時点では、この2つには利点も弱点もある。
●全部録画のメリットとデメリット
全部録画レコーダーのメリットとは、言うまでもなく、すべての番組を録画できること。そのため、理屈の上では取り逃しがなく、最も理想的なレコーダーのはずだ。しかし、現在の技術的な限界からデメリットがないわけでもない。
まず第1は画質だ。現在の地デジの映像をDRモード(放送そのままの画質)で1時間録画すると、その容量は実に約8GBにもなる。例えば、25GBの容量を持つブルーレイディスク(1層)では、約3時間の地デジ映像しか記録することができない。現在、最も大容量なハードディスクを搭載する東芝の「レグザサーバー DBR-M490」などでも4TB(タイムシフト部分)で、地デジDRモードでは6チャンネル録画すると約3.5日しか録画できない。
そのため、全部録画レコーダーでは、長時間録画機能によって圧縮して録画するのが普通なのだ。この種の全部録画レコーダーの謳い文句として、「最大17日間の番組を録画して好きなときに視聴」などというが、圧縮して録画しているので、長時間録画すればするほど画質は低下する。
次に第2は、古い録画が自動的に削除されてしまう。連続録画する機能は、普通の録画と扱いが異なる。例えば、レグザサーバーでは連続録画は「タイムシフト」と呼ばれ、タイムシフト領域に録画される。このタイムシフト領域では常に新しい録画が行われるが、タイムシフト領域の限界までいけば、古い録画から録画が削除されていくことになる。つまり、連続ドラマなどをタイムシフトで録画すると、時間の経過で自動的に古い回が削除されることになる。
そのため、連続ドラマを後でまとめて見たいなど、保存しておきたい録画がある場合、タイムシフト領域から通常領域にダビングする必要がある。つまり、すべての番組を自動的に録画してくれるといっても、見流す場合以外、結局はユーザーの手間がかかることになる。しかも、通常はDR録画(無圧縮)ではなく、長時間録画モードで録画するので、画質も最高画質ではないわけだ。
●自動録画のメリットとデメリット
対して、自動録画機能を持つレコーダーのメリット、あるいはデメリットはどんなものだろうか? 現在、最も強力な自動録画機能を持つのは、ソニーのブルーレイディスク/DVDレコーダー「BDZシリーズ」だと考えられる。この自動録画機能「x-おまかせ・まる録」では、ジャンルやキーワードなどを設定しておけば、適合した番組を自動的に録画することができる。また、ソニーのレコーダーでは学習型自動録画機能を搭載し、ユーザーの利用から学習し、ユーザーが好みそうな番組を自動録画することもできる。
しかし、逆に言えば、ユーザーが指定したキーワードやジャンル以外のものを自動録画してくれないわけで、学習型自動録画にしても、ユーザーが通常は視聴しないジャンルの面白い番組が唐突に登場した場合のような「奇襲」に弱く、自動録画できない可能性が高い。
●ユーザーの目的次第
このように全部録画レコーダーもまったくユーザーの手間がかからないわけではなく、自動録画レコーダーもパーフェクトではありえないというのが現状。結局のところ、ユーザーは自分の目的や使い方に応じてレコーダーを選択するしかない。
その適性を大ざっぱに言うと、全部録画レコーダーというのは、パッシブに録画を楽しみたい人に向いている。録画しておいて、その中で何か面白そうなものや、必要なものをピックしてみるという感じだ。前述のように録画を高画質に楽しみたいなら、DRモードで全部録画するか、ユーザーが自分で予約録画するしかないわけで、それなりに手間がかかることになり、必ずしも楽ではない。
また、価格が全部録画レコーダーのほうが自動録画レコーダーよりも高くなり、連続運転するため、電気を食うし、動作ノイズも増えるという弱点がある。とはいえ、全部録画レコーダーは、まだまだ進化の過程にある。今後の進化やユーザーの目的によって、その評価は変わってくるだろう。
これに対して、自動録画に強いレコーダーは、録画したい目的のものがあり、アクティブに録画を楽しみたい人に向いている。海外ドラマをチェックしたいとか、目的の俳優が出ているドラマや番組をチェックしたいというような、目的がはっきりした人に向いている。
(文=一条真人/フリーライター)