インダストリー4.0なんて“机上の空論”だ…日本の工場は、とっくの昔から導入
見誤りの原因
まずは、センサーをどう使うかという「使用シーンと役立ち」について見ていきましょう。工場の機械にセンサーをつけること自体、今では当たり前のことです。それを「何のために使うか」が問題です。通常、センサーはモノが到着したかどうかなど、ロボットや自動化装置の「目」であり、「耳」の役割を担います。つまり、モノの有無確認や寸法測定、良否判定などの用途に使われます。
この用途は極めて一般的で、1970年代ぐらいから現在に至るまで、世界中のありとあらゆる工場で活用されています。ところが4.0では、機械が壊れるのを事前にキャッチするといった予知保全の使い方を、IoTにおけるセンサーの中心的役割として想定しています。
「外国のへき地にあるブルドーザーの故障を事前にセンサーでキャッチできれば、メンテナンスを迅速に行えるため、故障で停止する時間を減らすことができる」という話を聞いたことがある人もいるでしょう。予知保全はまさにこの用途です。
さて、これのどこが空想なのでしょうか。一見、面白い話なので興味を持ってしまいますが、それが見誤りの原因です。結論を言うと、ブルドーザーで使うから珍しいのであって、工場においては、必要性の高い機械では随分昔から使われていて、まったく珍しくないのです。
例えば、高額な製品を扱う機械では、予知保全のためにセンサーがついているのは当たり前です。その代表格として、半導体装置にはセンサーが山ほどついています。半導体装置でつくるシリコンウエハーは、後工程に行くと1枚あたり数千万円するものもあります。たった1回でも機械が壊れて多数のウエハーに被害が及ぶと、その被害額はとてつもない金額となります。そこで、予知保全のためにセンサーを山ほどつけるのです。
製鉄所などの機械も同様です。製鉄所・化学プラントなどでは、機械を急に止めることができません。そこで、予め壊れそうな機械、部品を監視しておいて、定期修繕の際に取り換えるという方法が一般的です。もし、操業中に機械が壊れてしまうと、それが大掛かりだけに被害が広範囲に及び、非常に大きな損害が出てしまう懸念があるからです。