仕事や家事をしながら、“ながら聴き”で音楽やトーク番組などを楽しむ人が増えている。
ひと昔前までは、この分野はラジオの一人勝ちだった。しかし現在では、ネットのみで配信される“ネットラジオ”のユーザーが増え、さらにここ2年ほどはその新興勢力として、音声ブログのコンテンツサービス「Voicy(ボイシ―)」に関心が集まっている。
2019年2月18日、運営会社であるVoicyは、ベンチャーキャピタルをはじめTBSイノベーション・パートナーズや電通イノベーションパートナーズ、中京テレビ放送やスポーツニッポン新聞社などから、約7憶円の資金調達をしたと発表した。同社はこれまでも、2000万円台の投資を2度受けているが、ここまで大規模な出資を受けるのは初めて。事業拡大への本気度がうかがえる。
ネットラジオを聴くには、ほかにもPodcast(ポッドキャスト)やRadiotalk(ラジオトーク)、SPOON(スプーン)など、さまざまなプラットフォームが存在している。ゆるい雑談が主体のPodcastやRadiotalk、高校生や大学生のコミュニケーションに使われるSPOONなど、それぞれのサービスに置いてあるコンテンツの特徴はある。しかし、個人が“パーソナリティ”としてチャンネルをつくり、自由にしゃべったものを配信するという点では、どこも同じ。いくつかの設定をするだけで「誰でも配信者になれる」という手軽さから、チャンネルも数えきれないほどに増えている。
チャンネル開設には審査が存在
Voicyがこれらのサービスと一線を画すのは、チャンネル開設に“審査”があることだ。パーソナリティになりたい者は「Voicyチャンネル開設申込窓口」への申し込みが必要とされており、公式サイトには「現時点ではパーソナリティになれる方を厳選」しているとある。このことは、番組に一定のクオリティが保たれるということを意味する。パーソナリティもTwitterのインフルエンサーからビジネス界の著名人、さまざまな分野の専門家がメイン。「自己啓発」や「学び」の要素が強いことから、これまでになかった「意識の高いオトナ層」が習慣的に毎日利用するサービスとなっている。
たとえば、ビジネス書の要点だけをかいつまんで教えてくれる番組や、匿名ベンチャー投資家の本音トーク、脱・社畜をするための起業ノウハウ、運動トレーナーのボディメイク指南や若手の落語家が教える「伝わる話し方」講座まで、どれも役立つ話ばかり。本に例えるなら「実用書」に近いコンテンツといえるだろう。音声で、しかも話し言葉で伝えられるので、書籍よりもわかりやすく、声による個性や感情が伝わってくるのも特徴だ。ほとんどの番組が10~20分程度とコンパクトなので、すき間時間でもサクッと聴ける。
人気の番組の一例を挙げてみると……
『サウザーラジオ 〜富者の聖杯〜』
不動産投資で「経済的に自立したニート」となったサウザー氏が、資本主義の世界を“ゲーム”に見立てた場合の「勤め人を卒業する攻略法」を指南。男の幸せは「カネと女」と言い切る姿はすがすがしいの一言。
『森拓郎の聴くだけでヤセるラジオ』
多数の著書を持つイケメン運動指導者・森拓郎氏が、ダイエットや筋トレの方法を紹介したり、恋愛の相談に乗る番組。聞いているだけでも、身体の仕組みや栄養素への理解が深まり、ランチタイムや休日の過ごし方が変わるかも。ダウナー系のまったり口調にファン多し。
『仮想銀座高級クラブ「かほこ」』
2000年に株式会社トレンダーズを起業、2012年に女性最年少で東証マザーズへの上場を果たした経沢香保子氏が、“かほこママ”として人生相談に答える番組。「仕事でステップアップしたい」「元恋人とヨリを戻すべきか……」など、誰にでも覚えがありそうな悩みについて、温かく真剣に答えてくれる。