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高橋暁子「ITなんかに負けない」

“インスタ映えの聖地”下灘駅・青石海岸、実は私有地→不法侵入発覚で炎上のカラクリ

文=高橋暁子/ITジャーナリスト

 2019年3月に、「#海へ続く線路」「#海に続く線路」「#海に沈む線路」というハッシュタグ付きのInstagram投稿が大炎上したことをご存知だろうか。写真を見ると、線路が途中から海に沈んでおり、非常に美しくロマンを掻き立てられる。愛媛県下灘駅からすぐの青石海岸で撮影したものであり、確かに『千と千尋の神隠し』に登場する海へと続く線路を彷彿とさせる。

 なぜこのきれいな写真は炎上したのか。炎上の理由と実態、対処法までをご紹介したい。

“インスタ映えの聖地”下灘駅・青石海岸、実は私有地→不法侵入発覚で炎上のカラクリの画像1#海へ続く線路

実は私有地のインスタ映え線路

 下灘駅は、青春18きっぷのポスターなどで見たことがあるのではないか。背景に一面の海が見える無人駅であり、美しくて写真映えすることでよく知られている。無人駅にもかかわらず、Instagramには「#下灘駅」は4.9万件投稿されている。撮影のためにこの場所を訪れるユーザーは多い。

“インスタ映えの聖地”下灘駅・青石海岸、実は私有地→不法侵入発覚で炎上のカラクリの画像2#下灘駅

 それだけに、この近くでさらにインスタ映えする写真が撮れるということには強いニーズがあった。

 ところが、土地の所有者というユーザーによるFacebookでの投稿によると、

・『千と千尋の神隠し』モデルはデマ
・船を巻き上げて修理する場所であり私有地
・毎日100人あまりが不法侵入
・ゴミを撒き散らして迷惑がかかっている

というのだ。

 この投稿がTwitterに転載されたことで、同ハッシュタグ投稿は炎上し、複数のメディアなどで記事として報じられた。

“インスタ映えの聖地”下灘駅・青石海岸、実は私有地→不法侵入発覚で炎上のカラクリの画像3所有者による投稿が多数シェアされた

投稿に対して非難コメントが殺到

 執筆現在、同ハッシュタグの投稿のトップは、所有者に迷惑をかけないよう過去の投稿も削除しようと呼びかける非常に良心的なものや、所有者のFacebook投稿をシェアしたものなどになっている。

 事実を報じる記事が複数出たことで、同ハッシュタグをつけた投稿に批判コメントが多数寄せられたのだ。それにより、多くの過去のInstagram投稿が消されたようだ。まとめサイトなどに掲載されている画像にある投稿は、もうほとんど残っていない。

 まだ残る投稿には、「不法侵入は犯罪です。犯罪者は捕まります」「不法侵入乙です。こんなにバッシングされているのに何故消さないのですか?」などのコメントがついている。他にも、相手を犯罪者とみなすかなりきついコメントは多く見つかった。

 また、ある投稿には、「青石海岸と検索すると『千と千尋の神隠しの世界』と必ず出てくるので、何の疑いもなく観光地だと思い訪れました」と、検索結果を信じたこと、立入禁止と気づかなかったことなどが追記されていた。続いて、「コメント欄には『死ね』『馬鹿』と残念なコメントと共に添えられているものが多く見られました」と、罵倒が多数寄せられていたことが明記されていた。その後も批判コメントが殺到したため、この投稿は翌日には消されていた。

“インスタ映えの聖地”下灘駅・青石海岸、実は私有地→不法侵入発覚で炎上のカラクリの画像4
“インスタ映えの聖地”下灘駅・青石海岸、実は私有地→不法侵入発覚で炎上のカラクリの画像5非難コメントが殺到した投稿たち

検索結果から消えた「千と千尋の神隠しの世界」

 知らないで「メディア記事」に騙されて投稿していたユーザーは、いきなり非難・批判されて驚いただろう。しかし、私有地に不法侵入されて迷惑を受けた所有者は気の毒であり、これ以上不法侵入者を呼び込まないように、Instagram投稿は削除するほかない。

「投稿消した方がいいですよ。私有地なので不法侵入にあたるそうです」などと、投稿者を気遣った親切なコメントも多く見られた。しかし、さきほどご紹介したように誹謗中傷したり脅したりしているコメントも多かった。

 現在、『千と千尋の神隠し』や青石海岸で検索すると、過去にあったこの地を「千と千尋の神隠しの世界」とうたうメディア記事の多くは、炎上後削除されている。

 メディア記事といっても、一般ユーザーのInstagram投稿を元に記事化している例は少なくない。つまり、たとえメディアなどでインスタ映えをうたわれていても、実際は観光地などではなく、このように不法侵入に当たることもあるのだ。インスタ映えとして流行した場所の住人が迷惑している例も多い。

 検索結果やメディアの記事を信じる人は多く、このような事態を完全に防ぐことは正直かなり難しいだろう。もし自分がこのような投稿をしてしまっていた場合は、いくら悪意はなかったとしても素直に投稿を消したり、謝罪したほうが良さそうだ。加害者側になってしまっていることは明らかだからだ。自分がうっかり他人に迷惑をかける投稿をしてしまった場合の参考にしていただければ幸いだ。
(文=高橋暁子/ITジャーナリスト)

高橋暁子/ITジャーナリスト・成蹊大学客員教授

高橋暁子/ITジャーナリスト・成蹊大学客員教授

書籍、雑誌、Webメディアなどの記 事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。 SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などが専門。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎) など著作多数。NHK『あさイチ』『クローズアップ現代+』などメディア出演多数。令和 三年度教育出版中学国語教科書にコラム掲載中。


高橋暁子公式サイト

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