アップルは3月3日、iPhoneを車内で快適に使える車載システム・CarPlayを発表した。CarPlay対応車は、音声認識機能Siriを通して電話やメール確認・ルート検索・音楽再生等ができる。連絡履歴やマップ情報と連動することで、次の訪問先や到着時刻の予測も可能だ。さらに、アップル純正アプリに加え、SpotifyやiHeartRadioなどのサードパーティー製アプリも提供していく。
対応モデルはまず、イタリアのフェラーリ、ドイツのメルセデス・ベンツおよびボルボから近日中に発表される。このほか、本田技研工業、三菱自動車工業、日産自動車、富士重工業(スバル)、スズキ、トヨタ自動車、ドイツのBMW、アメリカのフォード・モーターおよびゼネラルモーターズ(GM)、韓国のヒュンダイ(現代自動車)および起亜自動車、イギリスのジャガーランドローバー、フランスのPSA・プジョーシトロエンの13社も対応予定としている。
車載システム分野では昨今、各社間の争いが激化している。グーグルが開発を強化、シリコンバレー界隈のスタートアップも新製品と次々に開発、発表している。その新製品の一つ、運転を支援するためのスマートデバイスAutomaticは、自動車へ接続することでメタデータを共有する。どの道を走行したか、どこに停車したかといった記録に留まらず、急加速・スピード・急ブレーキなどのデータを取得し、運転の良し悪しをスコア換算してフィードバックする。そのため、ガソリン代の節約も期待できる。また、エンジントラブルの際には故障箇所を検知、解決方法を提示する。メカニックが必要な非常時には、救助も呼ぶ。
Automatic はiPhoneだけでなくAndroidにも連携でき、販売価格は1個99.95ドル。現時点では、1996年以降に米国内で販売されたガソリン車へ接続可能だ。さらに、同社はこのほど、Facebook、Evernote、Weather、Dropboxなどをつなぐウェブサービス・IFTTTとの連携を開始した。自動車にエンジンをかけた時にメッセージを送信、ドライブの要所毎にFacebookでシェア、帰路についた時に家族へ連絡、走行距離をエクセルで管理、そんなことを自動で行える。
●カーナビ業界激変となるか
これら一連の動きにより、既存のカーナビゲーション(カーナビ)メーカー各社にとっては厳しい局面が予想される。カーナビメーカーとしては、日本だけでもアイシン・エィ・ダブリュ、デンソー、パナソニック、パイオニア、富士通テンなどの大手企業がひしめきあっている。しかし、スマートフォン(スマホ)のカーナビアプリの利用者が増え、ナビゲーション専用機器としてのカーナビを買い替える利用者は減少傾向にある。
一方、地図情報の提供サイドは参入障壁が高く、ゼンリン、トヨタマップマスター、インクリメント・ピー、昭文社に限られたような寡占状態となっている。
トヨタマップマスターの地図情報はこれまで、アウディなどの外車の純正ナビにも使われてきた。海外においても、中国最大のデジタル地図提供者である四維図新に対して、長年技術支援を行ってきている。
2013年、デジタル地図・位置情報の国内市場規模は10兆円に達した。主に成長しているのは、地図検索、店舗情報検索、気象情報検索などの各種アプリ・サービスを提供する分野だ。現在、スマホやカーナビなどのデバイス全体の市場規模だけで、この内1兆円を占めている。
CarPlay の発表内容はまだ限定的だが、近い将来のオープン化も期待される。車載システム業界激変の狼煙が上がったといえるだろう。