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その時“ITの素”が生成された! デジタル・フロンティア・スピリット第2回

無数の“名無しさん”が大活躍 仮面の集団“アノニマス”の正体とは

文=砂波針人/編集者・ライター

 そうすると、アノニマスのハックは直接的だけれど、クリエイティヴではないということだろうか? 塚越氏はこう解説する。

「アノニマスは、あの仮面を被る抗議方法がやはりユニークです。匿名なので誰でもないにもかかわらず、誰でもないものの象徴をまとうと、自分は誰でもないというキャラクターになれる。同様のことをたくさんの人がすれば、思想も信条も国籍も多様でありながらも、なんとなく一つに収まり、アノニマスというアイデンティティが形成される。そういう抗議方法に関する新しいバリエーションをつくったこと自体が、アノニマスの独創的なハックだと思います。だからこそ、世界中に影響力があるのでしょう」

 では、ハクティビズムは今後どこへ向かうのだろうか。

「正統派ハクティビズムもアノニマスも、政治目的を達成するためにハックを使うという意味では変わらない。そのような理想の下で何かしらのツールをつくり情報の透明性を確保するウィキリークスのような運動は、これまでもありましたし、今後も続くでしょう。対するアノニマスの抗議方法は、合法のものから企業サーバに不正侵入して情報を流出させる犯罪性の高いものまであるので、リーダーがいない彼らの活動は市民運動になる可能性もあれば、攻撃がより過激化することも考えられます」(塚越氏)

 日本ではとかく犯罪のイメージと直結しがちなハック。そう“誤解”していたなら、今回、ハックの原意に立ち返り、それが政治性を帯びるようになった道程をなぞったことで、ハクティビストたちへの見方は変わったのではないか。さらに8月20日に刊行される塚越氏の『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)を読めば、ハックする“名無しさん”の輪郭も、よりはっきり見えるかもしれない。(文=砂波針人)

砂波針人/編集者・ライター

砂波針人/編集者・ライター

1982年名古屋市生まれ。カルチャー誌編集部を経て、フリーの編集者・ライターとして各媒体で活動中。写真のみならず音楽、演劇、建築など取材対象は幅広い

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