●キラーコンテンツ1つで情勢が変わることも
そうした状況の中、今年に入って1つ日本国内で大きく伸びたと報道されたタブレットがある。レノボの「Miix2 8」だ。8インチのディスプレイを搭載したタブレットで、約350gと軽量ながらバッテリーの持ちもよく、安価なモデルだ。これが、世界市場での動きに反して、日本でだけ非常に売れた。
種明かしをすれば、ブラウザゲーム『艦隊これくしょん』(DMM.com)用端末としての人気だったようだ。PC雑誌で最適機と紹介された結果、飛ぶように売れた。海外市場向けだった端末も日本向けに流し、一時は出荷が遅れるほどの状態にもなった。
ゲーム機などではよくあることだが、1つのキラーコンテンツがあるかどうかで端末の伸びは大きく違ってくる。『艦隊これくしょん』の場合は、iOSやAndroidではなくWindowsが必要だったことで、それまであまり個人市場では需要がなかったWindowsタブレットに光が当たった。
コンテンツ配信を自社サービスとして行っているアマゾンやグーグル、アップルだけでなく、このように何か新しいコンテンツが1つあれば動きは変わってくる。LINEがしたいからスマホを買う、といった感覚でユーザーが目的を持って選べるハードウェアになることが当面の目標ではないだろうか。
●ビジネス用途のWindowsタブレット
目的を持った使い方といえば、ビジネスユースが最たるものだが、こちらの分野ではWindowsタブレットが注目され始めているようだ。
セキュリティ面からAndroidよりもiPadを選択する企業が多かったが、最近ではそこにWindowsという選択肢が加わっている。タブレットといえども中身はPCと同じであるため、社内のPCと併せて管理しやすいというのが大きな理由だ。さらにMicrosoft Officeを外出先でも利用できることも大きなメリットになる。
特に最近増えているのは、個人に割り当てるPCとタブレットを1台で済ませようという考え方での導入だろう。キーボード部分が取り外せるデタッチャブル端末や、ディスプレイ部分を回転させたりしてタブレット風にも使えるコンバーチブル端末を採用して、オフィスではノートPC、外出先ではタブレットとして使わせる方法だ。これだと1人1台で済むから導入コストや管理の手間が低減できる。マイクロソフトがリリースしているSurfaceシリーズなどは、そうした使い方を想定したマシンだ。
ビジネス面では、長年多くの企業でWindowsとMicrosoft Officeの組み合わせが使われてきたことが、Windowsタブレットの強みになるわけだ。この使い方での採用を目指すならば、中途半端に小さなボディサイズは使いづらい。最新のSurface Pro 3は12インチディスプレイなので、タブレットとしては大型だが、オフィス用と携帯用を1台にするならば、このサイズが最適なのかもしれない。
大画面タブレットにキーボードを添えて持ち出せるPCにするか、外出先ではあくまでも補助的に使える程度でよしとするか。何をするための機械なのかをある程度明確に打ち出さないと、今後の伸びは難しそうだ。
一方で、外出先でも布団の中でもディスプレイを眺めているような人にとっては、スマホは維持費用が高すぎるという声も多い。格安SIMに対応した手頃な大きさのタブレットや、格安SIMを挿入したモバイルルータとタブレット、などの組み合わせで使いこなす人も増えてくるだろう。そうしたユーザーに対しては、機能面や価格面で訴求できる商品を打ち出さなければアプローチできない。
明確なコンセプトなしに価格と機能両面で中途半端な製品を売り出しても、なんとなく売れてしまうような市場でなくなってきているのは確かだ。今後、各メーカーがどのような魅力的な製品を提案してくれるのか、期待したい。
(文=エースラッシュ)