ちなみに、我々がユーザーの位置情報を取得し、なにか良からぬことを企んでいるんじゃないかという叩かれ方もしましたが、ユーザーがアプリをダウンロードしたときに「Google Play」などから提供される購買データ(ユーザーの端末キャリアや使用機種)くらいしか、情報を取得していません。先ほど申したとおり、我々が個人情報と結びついていないユーザーの位置情報をチェックしたところで、マーケティング上は、まったく無価値です。「カレログ」のマスデータを活用したいという企業からの問い合わせもありましたが、もちろん断りました。
●叩かれてもいい? “劇薬”こそが面白いコンテンツ
――緊密な関係同士で位置情報を共有することに可能性を感じたというわけですね。一方、恋愛支援としては、どのような理念があるのでしょうか?
三浦 今は恋人同士で「LINE禁止」のルールを設けているケースもあると聞いています。多くの人と繋がれることに対して「出会いのツールになるのではないか?」という恐怖心があるからでしょう。一方、「カレピコ」は最高でも10人とまでしか共有できなくなっていて、本当に大切な人と、位置情報や誕生日、記念日といったクリティカルな情報を共有できるサービスです。大きなマス向けの仕掛けはTwitterやFacebookがやればいいと思うので、我々は個人にとって大切な情報をクローズな場所で共有できるサービスを提供していこうと考えています。
つまり、あえて多くの人と繋がらず、大事な情報を緊密に交換することの意味を模索していきたいということです。そういう場で共有すべき情報は他にどういうものがあるのか、これからも考えていきたいと思っています。
――なるほど、仰っていることはよく分かります。ただ、「カレログ」には、「そもそも、恋人を監視する発想自体が気持ち悪い」という拒否反応もありました。
三浦 そういう倫理観に踏み込んでいることも、叩かれてしまった原因だとは十分に自覚しています。ある意味、死刑制度みたいなもので、その存在自体が許せないと考える人は、必ずいるでしょう。ただ、毒にも薬にもならないコンテンツを開発しても面白くありません。例えばエヴァンゲリオンだって、今でこそ社会性を持った作品だとされていますが、当時は一部の視聴者から嫌悪感を抱かれるなど、賛否両論がありました。我々も劇薬だけれども、人によっては効果があったり、救いになったりするコンテンツを作っていきたいと思っています。
――すでに「カレピコ」は「新サービスも酷すぎ」「プライバシーの問題もあるしさっさと終われ」などと、ネットで叩かれはじめているようです。これを聞いて、社長は心が折れないですか?
三浦 いろいろな意見があることは分かっています。でも、使い方も含めて議論になり、サービスがより洗練されていく。だから、叩かれてもいいんです。「カレログ」は終了時点で約2万5000人のユーザーがいたのですが、一連の騒動中に登録したのは1万人ほど。残りの1万5000人は、その後にじわじわと増えていったユーザーです。
一方、ご指摘のとおり、ネット上では肯定的な意見がほとんどありません。でも、そうやって批判の対象になり、結果的に多くの人に知られることによって本当に必要としている人に届くという側面もあります。こういう言い方をすると、「炎上マーケティングだ」と、また批判されてしまいそうですが(苦笑)
●テクノロジーが可能にしてしまった恋愛の未来
――あの騒動の後にユーザーが増えていたとは、意外でした。やはり潜在的なニーズがあったということでしょうか?