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死亡率4倍?たばこ、そもそも有害なのに、なぜ法的に許されている?

文=千葉雄樹/A4studio
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死亡率4倍?たばこ、そもそも有害なのに、なぜ法的に許されている?の画像1「Thinkstock」より

 今年3月、英医薬専門誌「BMC Medicine」に「喫煙者は非喫煙者に比べると死亡率が最高で4倍になる」という研究結果が発表された。同研究はオーストラリア国立大学の国立疫学・公衆衛生センター(NCEPH)が、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の45歳以上の男女、計20万4953人を追跡調査したもの。

 同調査では、人年法が採用されている。集団の追跡調査では個々の対象者の観察期間が異なる場合、1人を1年間観察したものを「1人年」とする。例えば、2人を1年間観察した場合は2人年、1人を2年間観察した場合も2人年となる。

 同調査の母数は87万4120人年であり、計測期間内の死亡数は5593人となった。その中の「喫煙者」と「非喫煙者」の死亡率を調査したところ、非喫煙者に比べると喫煙者の男性は約2.76倍、女性は2.95倍も死亡率が高いことがわかったのだ。内訳として1日1~14本たばこを吸っている人の死亡率は非喫煙者の約2倍、1日25本以上たばこを吸っている人の死亡率は約4倍にもなるというのだ。

 以前から「健康に害がある」といわれてきたたばこ。では、なぜそもそも有害性や依存性の高いたばこが法律で許されているのだろうか。『タバコ規制をめぐる法と政策』(日本評論社)の著者である関西大学法学部教授・田中謙氏は語る。

「現在、日本では『たばこを禁止すべきである』という国民のコンセンサス(合意)が得られていないので、法律によってたばこが禁止されているわけではありません。一方、大麻は大麻取締法によって禁止されていますが、これは『大麻を吸うべきではない』という国民のコンセンサスが得られているからです。国民が選挙で選んだ国会議員が集まった国会で同意があってはじめて成立するものが法律なので、法律が成立するかどうかは、有害性や依存性などの科学的な根拠ではなく、国民のコンセンサスが得られているかどうかがカギになるのです。たばこに関していえば、『たとえ健康を害するとしても、たばこを吸うかどうかは個人の自由』と考えている国民が多いので、たばこが法律で禁止されているわけではありません。『たばこを吸うべきではない』という国民のコンセンサスが得られれば、たばこ取締法といった法律ができる可能性はありますが、現時点ではなかなか難しそうです」

 では、法律によって喫煙を全面的に禁止することはないにしても、何かしらの規制が強化されることはないのだろうか。

「一言でたばこ規制といっても、さまざまなレベルがあります。『たばこを全面的に禁止して、たばこの販売自体を禁止する』という規制はもっとも厳しい規制ですが、そこまで厳しくない規制も考えられます。例えば、屋内施設を禁煙にする、たばこ税をもっと値上げする、たばこのパッケージの有害表示をもっと大きくするといった規制は、たばこの販売自体は認める規制ではありますが、たばこを規制するものです。たばこの販売を全面的に禁止するまではいかなくても、このようなたばこ規制を強化することが必要だと思います」(同)

受動喫煙の規制が甘い日本

 さらに田中氏は、次のように語る。

「個人的に強化してほしいのは、受動喫煙防止規制です。喫煙者が主張する『喫煙の自由』も、『他人の生命や健康を害するものではない』ということを内在的制約としているはずです。とすると、原則として、喫煙者と非喫煙者とが共有する『公共スペース(一般の飲食店も含む)においては禁煙にする』といった、受動喫煙を防止する規制を強化する必要があると思います」

 たしかに屋内での喫煙を法的に禁止している諸外国に比べると、日本は受動喫煙を防止するための規制が緩い。現時点では個々の店舗が独自ルールで喫煙席や禁煙席の有無を決めているだけにすぎないが、今後、法的拘束力を持って屋内での喫煙が禁止になる可能性もありそうだ。

 さらに現在、条例によって取り締まられている路上喫煙だが、マナーの悪い喫煙者が減らなければ、今後は法律等で規制が強化される可能性もある。今以上に肩身の狭い思いをする羽目にならないよう、喫煙者は十分に他人の権利を考慮すべきといえよう。
(文=千葉雄樹/A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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