従来、面会交流について法律上の根拠はなかったが、2011年の民法改正により明文で規定された(民法766条1項)。また14年に、「夫婦が同居した状態で子を連れ去って別居することを違法」とするハーグ条約に日本が加入したことで、親権・監護権に対する注目が高まってきた。
このような背景もあり、最近になって面会交流の妨害について裁判所の対応にも変化が表れている。例えば、面会交流の拒否を理由として親権者を妻から夫に変更した審判や、面会交流を意図的に妨害した場合に母親のみならず代理人の弁護士にも損害賠償請求の成立を認めた事例が出てきた。
こうした状況を反映して、調停でも面会回数が従来月1回だったものを月2回程度と夫側に有利に変更するものも増え、また、宿泊を伴う面会交流が認められるようになることも珍しくなくなってきているという。それでも、柳下弁護士は「月1~2回の面会だけで十分な父子関係が築きあげられるかは疑問」と指摘する。
「日本以外の先進国では離婚後も共同親権を認めていることからすると、まだまだ不十分といわざるを得ません。すぐに共同親権を実現することが難しいとしても、父子で一緒に過ごす時間や機会をできるだけ増やす必要があるのは当然です。今後は、面会交流が認められることを前提として、具体的にどのような交流が子どもにとって利益となるのか、一定回数を確保することはもちろんのこと、交流の質を高めることを中心に話し合えるようになることを期待したいです」(同)
子どもに会うことよりも母親である元妻に会う口実として、あるいは嫌がらせとして面会交流を要求する男性も少なくないという。そうした場合は、安易に子どもに面会させることは不適切だといえる。ただ、夫婦が離婚に至った理由はさまざまで、男性側だけに非があるというわけではない事例も多くある。それにもかかわらず、別居している場合、子どもは母親といればいいという固定観念があるとしたら大きな問題だろう。司法には、「離れてしまった親子の接点」という重要な意味を持つ面会交流を、具体的事情に即して、さらに充実させていく姿勢が必要ではないだろうか。
(文=関田真也/フリーライター・エディター)
【取材協力】
弁護士 柳下明生
『男の離婚術』著者である、弁護士法人マイタウン法律事務所の離婚部門主任を務める。
『男の離婚』に関する紛争を多数手掛けている。
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