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北海道、捕獲した年10万頭のエゾシカの処分問題が深刻…シカを原料に“魔法の薬”製造

文=道明寺美清/ライター
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北海道の廃校を工場に

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廃校を利用した工場

 年間10万頭以上のエゾシカが捕獲され廃棄されている現状は、鄭権氏にしてみればまさに宝を捨てるようなものだった。エゾシカを和漢原料として利用できれば、北海道のエゾシカによる害獣問題も同時に解決できると考えた鄭権氏は、まず工場としてつかえる場所を探した。

「工場とする場所を探して奔走すること1年以上。廃校となった新ひだか町東静内の旧静内第二中校舎を利活用する企画案を街が募集していることを知りました。『これだ!』と思い、すぐさま応募しました」(同)

 その結果、見事に企画案が採用され、2018年2月より、和漢成分ロクキョウの開発・製造を開始した。しかし、北海道での開発製造には多くの苦労があったという。

廃校を工場として使えるように整備するのも、スタッフと私で行いました。寝袋で廃校に寝泊まりしたのですが、その寒さは想像以上でした。水道管が凍って破裂したこともあります。原料調達のため、1日500キロあまりを7~8時間かけて運転。数日で数千キロを走破することもありました。鹿は大きくて重く、力仕事でいつもヘトヘト。原料の新鮮さを保つため、施設ごとに大容量冷凍庫が必要です。電気工事をして、冷凍コンテナの運搬にもクレーン車を用意して、結果、多額の費用が発生しました」(同)

 また、エゾシカを原料としてその和漢成分を取り出すには、熟練した技術者の存在が不可欠だった。

「中国から技術者を呼びましたが、そのビザがなかなか下りず、大変苦労しました。膠職人の技能を説明することが難しく、書類を何度もつくり直し、最終的には法務省での審議を受けて、許可が下りました」(同)

 ロクキョウを取り出し、高品質の和漢素材をつくりたいという熱意が勝り、工場は軌道に乗り始め、廃校の利活用と害獣問題の解決にもつながる鄭権氏の取り組みは、道内外から大きな注目を浴びている。

 工場として稼働し始めた現在、鄭権氏にはさらなる構想があるという。

「今後、エゾシカを原料とする和漢素材の製造工場として規模を広げ、道内での雇用拡大など地域貢献ができればと考えています。エゾシカの問題を解決するために行動を起こす、道内すべての人がヒーローだと私は考えています。私は、和漢素材づくりを通してパワーを送り、そういったヒーローの皆さんが元気に働けるようサポートしたいと思っています」(同)

 そう話す鄭権氏は、エゾシカを利活用し、和漢素材で多くの人を健康にすることで、人々を誰かのヒーローにしていくことだろう。
(文=道明寺美清/ライター)

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