7月2日、クジラの死体が東京湾を漂流し、海上保安庁が注意喚起を促した。漂流していたクジラは同日午後3時過ぎに、国土交通省関東地方整備局の清掃兼油回収船「べいくりん」の協力で回収されたが、1日から31年ぶりに商業捕鯨が再開され、クジラへの関心が高まっているさなかの出来事となった。クジラの生態や資源量(頭数)について、水産庁・資源管理部国際課捕鯨室に話を聞いた。
ーーなぜ死んだ状態でクジラが漂流してきたのでしょうか。
「クジラが死んだ経緯は明確にはわかりかねますが、今回現れたクジラは自然死だろうと考えています」
ーーなぜ注意喚起が促されたのでしょうか。
「クジラはレーダーに映りにくく、また、沈んだり浮いたりを繰り返すので目視で注意してもらいたいからです」
ーーどのような点に注意すべきでしょうか。
「事故が起きないようにしてもらいたいです」
また、一般財団法人日本鯨類研究所参事の西脇茂利氏に話を聞いた。
ーーなぜ東京湾に死体が漂流するような事態が起きているのでしょうか。
「鯨が東京湾に入ってきたことにより、アナウンスしなければならないことは年に数件はあります。死んでいる場合は回収しても、陸地に運べば埋設しなくてはならないため、外洋に運んで行くことになります」
ーー東京湾にクジラの死体が漂流していると、なぜ危険なのでしょうか。
「当然、海上での衝突事故などが考えられるからです。東京湾は非常に船舶が多く、クジラの死体は大きな材木のようなもので、プレジャーボートなどの小さいものは乗り上げたり、沈没の恐れもあります」
ーー何かクジラの生態系などに、異常が起きているのでしょうか。
「因果関係はありません。東京湾への鯨類の迷入は珍しいことではありません」
ちなみに海上保安庁広報部は、次のように説明する。
「今回の注意勧告は珍しいものではない。東京湾は一日に船舶が何千隻も通る場所で、鯨類だけでなく漁具やさし網などの漂流物でも事故につながる。注意勧告の有無は漂流物の場所や、船舶の多さなど時と場合によって判断される」
今回は大事には至らなかったが、今後も“クジラの東京湾進入”には注意が必要そうだ。
(文=津田土筆)