日本政府は6月30日、国際捕鯨委員会(IWC)から脱退し、商業捕鯨を7月1日から31年ぶりに再開した。日本の領海や排他的経済水域で漁を始めると同時に、遠方での調査捕鯨は終了する。
捕鯨をめぐっては調査捕鯨を含め、国際社会からの批判が強い印象だか、ノルウェーやアイスランドでも商業捕鯨は行われている。日本では古来より鯨食が取り入れられており、歴史は古い。
日本における鯨食は戦後、食糧難の時期に主要タンパク源としてGHQ(連合国最高司令官総司令部)の指示のもとに始まった。給食にも採用されていたため、今回の商業捕鯨開始に際して「給食で食べたことを思い出し、懐かしい」という声も散見される。
今回の捕鯨対象鯨種はミンククジラやニタリクジラ、イワシクジラとされており、1日には山口県下関市と北海道釧路市の港から捕鯨船が出航。釧路くじら協議会では、9月19日から21日の3日間で「くじら祭り&くしろの鯨 味めぐり」を開催する予定もある。ほかにも北海道網走市、青森県八戸市、宮城県石巻市、千葉県南房総市、和歌山県太地町が漁を開始する。
今回の決定を受け、ドイツ人男性(34)は「全体の個体数が少ないので生態系に悪影響があることは明確なのに、なぜなのか」と語る。また、アメリカ人男性(58)は「文化的な問題だとしても、日本にとって今さらなんのメリットがあるのかわからない。それほど食べたいものなのか」など釈然としない様子だ。
こうした疑問について、水産庁はHP上で次のように説明している。
「日本は、持続可能な方法で捕鯨を行う予定で、資源が豊富なクジラの種・系群を枯渇させることなく利用することを基本方針としており、シロナガスクジラのように個体数の少ない種類については積極的に保護に取り組んでいる」
クジラの個体数にはいまだ不明瞭な部分は多いが、海洋生物環境研究所主任研究員(当時)だった笠松不二男氏の論文『鯨の数を数える』(日本鯨類研究所1995年発行「捕鯨と科学」収録)が参考になるかもしれない。
今後の捕鯨量などについて、農林水産省捕鯨室に話を聞いた。
ーー捕鯨する海域が狭まりますが、どの程度の捕鯨量を想定していますか。
「ミンククジラ52頭、ニタリクジラ150頭、イワシクジラ25頭と、12月31日までの最大限の捕獲予定頭数は、保守的な数値に抑えてあります。昨年度より少ない数です」
ーー学校給食でも出しますか。
「下関市などでは地域の食文化として教育の意味もあり、親しんでもらおうということで、出していきます。今年は昨年度に南極で獲れたものを使います」
当面は採算の取れる事業となり得るのか、また国際的理解が得られるかなど、さまざまな方面で反響がありそうだ。
(文=津田土筆)