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トイアンナ「私は言いたい」

ラッコが日本に10匹しか、いなくなった理由

トイアンナ/ライター、性暴力防止団体「サバイバーズ・リソース」理事
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ラッコが日本に10匹しか、いなくなった理由の画像1「Thinkstock」より

「問題です。日本にラッコは何匹いるでしょうか?」

 答えは10匹。幼少期に水族館を訪れた方は驚くだろう。それくらい今の30代以上にとってラッコは身近な存在だった。ラッコは1982年に伊豆・三津シーパラダイスで国内初登場。愛くるしい姿や水面に浮かぶ珍しい生態からブームとなった。ピークの94年には国内で122匹が飼育されていた。

 しかしラッコにとって、人間はよきパートナーとはいえなかった。18世紀から始まった毛皮目的の乱獲により、20世紀初頭には絶滅の危機に瀕した。また、1989年のタンカー原油流出事故で油が付着し、水面に浮いていられなくなった約6,000頭のラッコが溺死する惨事があった。現在はワシントン条約によって保護されているため、水族館での展示も激減している。

水族館は動物にとって害なのか?

 しかし、ラッコが日本の水族館から消えゆく理由は、ワシントン条約だけではない。繁殖が成功せず、子孫が生まれなかったのである。これには野生から離されたことで本能が薄れ、交尾へ至らなかったという推測が立っている

 このようなニュースを目にすると、ふと「水族館や動物園で飼育されるのは、彼らにとって『かわいそう』なんじゃないか?」と疑問を抱いてしまう。海外では1970年代から「動物の権利」を求める声が上がり、動物園・水族館での飼育へ反対する声も根強い。狭い水槽に一生「軟禁」され、ワーワーキャーキャー叫ぶ子どもに晒されることがストレスでない動物はいないだろう。

 それでも、人間側の事情はある。子どもへ図鑑で世界の動物を見せるだけなのと、実際に目の前で大きさを体感できるのでは、どちらが教育によいか。圧倒的に後者である。現在30代以上の人も、「ラッコがかわいい」という共通認識を得たのは水族館のはずだ。飼育員も最善のケアをしている。動物のために今すぐ動物園と水族館を廃止しろ、という意見には賛成できない。

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