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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」
東京でネズミが大増殖している…ペスト菌のパンデミックの恐怖
ネズミからノミを介してヒトへ感染するケースも
実は、近年にも、ペスト菌が再び日本に侵入しかねない危機があった。それは、アメリカから輸出予定だったプレーリードッグがペストに感染しており、多数が死亡したという事例があったのだ。これを機に2003年春から、プレーリードッグの輸出入および売買が禁止されている。
ネズミとの接触がなくても、ペストは感染拡大する。たとえば、ネズミ→ノミ→ヒトという具合に、ペストがノミによって媒介されてヒトへと感染を広げることがあるのだ。いったんヒトへ感染すると、ヒトからヒト、またはヒト→ノミ→ヒトといった経路で、エピデミック(特定地域での大量発生)からパンデミック(世界規模での大量発生)へと広がる可能性がある。
東京の中心ともいえる渋谷のコンビニでネズミが縦横無尽に走り回る状況は、ペストに限らず多くの危険をはらんでいる。ネズミは、ツツガムシ病、サルモネラ感染症、レプトスピラ菌によるワイル病などのように、感染すれば命を脅かす感染症も媒介する。
東京都は05年2月に「東京都ねずみ防除指針」を策定し、都民向けに12年4月に「都民のためのねずみ防除読本」を発行した経緯はあるが、“ネズミ対策”は功を奏していないと言っていいだろう。来年の東京オリンピックを控え、日本の国際化がさらに進むことは明らかであり、それに伴い、なんらかの菌やウィルスが人や物資に付着して日本に持ち込まれる恐れもある。日本政府は、東京都や地方都市のネズミの生息状況を調査し、その対策に乗り出すべきではないか。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)
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