韓国環境部は今年1月から微細ホコリの濃度を公表しているが、2004年のソウルの濃度は1立方メートル当たり平均76マイクログラムだった。この時点ですでにWHO基準値より3倍ほど高いことになるが、ここ10年で2倍以上も濃度が上がっている。
微細ホコリが急増している原因は、中国にあると指摘されている。急速に産業化する中国は石炭に対する依存度が高く、その石炭燃料によってスモークが発生、それが西風や北西風に乗って韓国に流れてくるのだ。空気中の汚染物質の30~50%が中国発ともいわれている。
微細ホコリの問題点は、そこに含まれた鉛や水銀などの重金属と、各種の有害物質が呼吸器や肺に浸透する恐れがあること。長時間、微細ホコリの影響を受けると、風邪、喘息、気管支炎はもちろん、皮膚疾患や眼球疾患などにもつながるという。
微細ホコリの濃度が上がり大気汚染が進行すると、脳卒中が増加するという研究結果もある。イギリス・エディンバラ大学の研究チームによると、PM10やPM2.5といった微細ホコリ濃度が、1立方メートル当たり10マイクログラム増加すると、脳卒中の入院や死亡率は0.3~1.1%増加するという。韓国人の死亡原因の2位は脳卒中だが、微細ホコリが関係している可能性もある。そんな研究を知ってか、韓国環境部は「微細ホコリの濃度が高い時は、高齢者はなるべく外出を控えたほうがいい」と注意を呼びかけている。
ただし、気をつけるべきは高齢者だけでない。アメリカの全米経済研究所(NBER)は最近、ある研究チームが「中国黄砂と韓国の乳幼児健康」という報告書を発表したと伝えている。同研究チームは03~11年の出生児155万人を分析しており、微細ホコリの濃度と新生児の体重における関係性を発見したという。それによると、微細ホコリは新生児の体重と妊娠週数に悪影響を与えることが判明。「2500グラム未満の低体重児を産む可能性が高まる」という。同報告書は詳細な原因について解明していないが、韓国国内でも同じような結果が出ている。
高齢者から胎児にまで悪影響を与えるという微細ホコリ。その濃度を下げる抜本的な対策は現在もなく、各人がマスクなどで対処するしか手はないという。微細ホコリ問題は、この時期のソウルからの眺めと同じように不明瞭だ。
(文=編集部)