国交省が力を入れるインフラツーリズム
政府は2020年までにインバウンド4000万人誘致を目標に掲げているが、今回の韓国人客激減で、赤信号が点滅し始めた。従来の観光政策だけではない、新たな発想が必要になってきている。最近、注目を集めているのがインフラツーリズムという分野だ。
13年の観光立国プログラムの中に、「インフラプロジェクトと連動した観光振興」が盛り込まれたことが出発点。国交省が中心となってダムや橋などのインフラ施設の観光化を目指してきた。最近は民間主催ツアーにも組み込まれている。18年11月には「インフラツーリズム有識者懇談会」を設置し、20年に向けた取り組みの強化を図る。
19年7月、国交省は「インフラツーリズム魅力倍増プロジェクト」をスタートさせ、この夏は全国で437件のインフラツアーの内容をポータルサイトに掲載した。有識者懇談会はモデル地区5カ所を選定した。
・鳴子ダム
宮城県大崎市。日本人技術者によって造られた日本初のアーチダム。世界農業遺産の「大崎耕土」や温泉、名勝などを含めた流域連携モデル。年間ツアー参加者1446人。
・八ッ場ダム
群馬県長野原町。建設中ダムで多彩な見学ツアーを行っている。建設段階から管理段階への移行モデル(今年度完成予定)。年間ツアー参加者5万4819人。
・天ケ瀬ダム
京都府宇治市。官民一体の観光地経営体(DMO)と連携したツアーや淀川水系支流の高山ダムとの組み合わせなど広域連携モデル。年間ツアー参加者2万6906人。
・来島海峡大橋ほか
愛媛県今治市。瀬戸内しまなみ海道上の世界初の三連吊り橋。塔頂体験ツアーを開催。年間ツアー参加者370人。
・鶴田ダム
鹿児島県さつま町。九州最大の重力式コンクリートダムで水位低下時には明治期の発電所遺構が出現する。霧島連山や桜島等の広域周遊モデル。年間ツアー参加者2609人。
国交省はモデル地区での実証実験を踏まえ、20年度までにダムや橋、港といったインフラ工事現場の見学などで年間集客数を100万人に引き上げるとしている。2017年度が約50万人だったから倍増を狙っている。
課題は認知度アップ
身近なインフラで人気を集めているケースも結構ある。そのひとつが年間2万人超が訪れる首都圏外郭放水路(埼玉県春日部市)だ。この放水路は洪水を防ぐために建設された世界最大級の地下放水路で、「日本が世界に誇る防災地下神殿」といわれている。