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安倍政権、沖縄カジノ誘致構想、辺野古移転とセット…ハウステンボス、海上カジノ撤回

文=編集部
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横浜、カジノ誘致を正式決定 港運協会が反対(写真:東洋経済/アフロ)

 カジノを含む統合型リゾート(IR)整備について国土交通省が行った誘致の意向調査で、東京都や大阪府・市など全国8地域が、誘致予定・検討中と回答した。ここから最大3カ所が選ばれる。

カジノ誘致を検討している地域】

・北海道(苫小牧)

・千葉市(幕張新都心)

・東京都(お台場)

・横浜市(横浜・山下ふ頭)

・名古屋市(名古屋港周辺)

・大阪府・市(夢洲)

・和歌山県(マリーナシティ)

・長崎県(ハウステンボス)

 候補地が正式決定するのは2020年頃とみられる。

 首都圏の誘致レースを見てみよう。2019年8月、横浜市は「山下ふ頭」を候補地として、2020年代後半にIR開業を目指すと宣言した。横浜の有力者で“ハマのドン”こと、横浜港運協会会長・藤木幸夫氏は、山下ふ頭へのカジノ誘致に反対。横浜港ハーバーリゾート協会を設立し、カジノ抜きでの山下ふ頭再開発計画案を提示している。「影の横浜市長」と呼ばれるのが、カジノ推進派として知られる菅義偉官房長官。菅氏が乗り出して、カジノ推進の横浜市とカジノ反対の藤木氏の折り合いをつけるかが今後のカギを握る。

 カジノ大手の米ラスベガス・サンズは大阪での事業参入を見送り、東京・横浜での参入を目指すとの方針を表明。続いて香港のメルコリゾーツ&エンターテインメントも横浜市でIRに参入する意向を示した。ラスベガス・サンズのジョージ・タナシェヴィッチCEOは10月24日、大阪市で開かれた見本市で記者団に「横浜が当社にとって魅力的な大都市だ」と述べた。国際会議や展示会などを含め、投資額100億ドル(約1兆800億円)規模のIR施設を検討するという。

 東京都はいち早く「お台場カジノ構想」を掲げていたが、たび重なる知事の交代や、会場候補地が売却されたことから、一旦は白紙に戻った。新たに臨海副都心の開発計画「東京ベイエリアビジョン」でIR誘致の復活を見せ始めた。海外のカジノ運営会社などは東京を希望していたが、これまで都はあまり熱心ではなかった。しかし、小池百合子都知事の再選計画の中にIRが盛り込まれつつある。IRを自民党との取り引き材料して、自民党の支援を得るというシナリオが現実味を帯びてきた。

 千葉市の幕張新都心は、市や県よりも地元企業などによる誘致活動が活発なのが特徴。市はあくまで「幕張新都心活性化」の選択肢の一つというスタンスだ。

 本命は横浜、東京はダークホースといった構図だ。

大阪の「夢洲」は一歩後退?

 大阪府はカジノ法案が話題になった当初からIRに名乗り上げてきた。候補地は大阪湾にある人工島の「夢州(ゆめしま)」。広大な土地はあるが、現在はコンテナターミナルが2つあるのみの空き地だ。大阪府と市は万博とIRのセット誘致を掲げてきた、2025年の万博開催が決定。IR誘致にも弾みがついた。大阪は日本維新の会の本拠地。知事と市長が入れ替わる奇策で、市長の吉村洋文氏が知事、知事の松井一郎氏が市長に当選した。安倍政権は「改憲勢力」の維新の会との関係を重要視しており、カジノ誘致に異論はない。

 IR運営大手の米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの2社は10月24日、大阪市で共同記者会見を開いた。MGM日本法人のエド・バワーズCEOは、「(日本での事業展開は)大阪オンリーだ」と述べ、夢州IRのみの参入を目指す姿勢を強調した。これまでは「大阪ファースト」というフレーズを使っていたが、「大阪オンリー」と一歩踏み込んだ表現でアピールした。

 ただ、米ラスベガス・サンズが大阪から撤退したのは痛手だ。絶対本命から一歩後退した、との見方も出ているが、首都圏1、関西1、地方1と全国に分散させる方針が生き続けているなら、「夢洲」は実現するだろう。

 和歌山県は地元選出の二階俊博・自民党幹事長を押し立て、マリーナシティへの誘致に力を入れている。大阪に比べて規模が劣るのが最大のネックだ。

北海道と愛知は足並みが揃わず

 首都圏、関西圏以外をみてみると、北海道は2019年4月に行われた知事選で、IRに中立な立場の鈴木直道氏と反対派の石川知裕氏が一騎打ちになった。選挙の結果次第でIR誘致の方向性が変わる可能性があった。鈴木氏が勝利したことにより、高橋はるみ・前知事の「苫小牧市を候補地とする」IRの方針が引き継がれた。その方針に以前から手を挙げていた後志総合振興局管内にある虻田郡留寿都(るすつ)村(土屋隆幸村長)が反発。リゾート開発会社、加森観光が運営するリゾート「ルスツリゾート」を中心とする独自のIR構想を打ち出すなど一本化できていない。

 加森観光が運営する留寿都村のリゾート「ルスツリゾート」は、北海道最大級の高原リゾート。遊園地、ゴルフ場、スキー場あり、スキー場は外国人観光客に人気が高い。敷地内の山頂から、支笏洞爺湖国立公園の景色を眼下に望むことができる。留寿都村は童謡「赤い靴」のふるさとでもある。

 愛知県も同様。大村秀章県知事と河村たかし名古屋市長は犬猿の仲。県内へのIR誘致をめぐってもバトルを繰り広げてきた。県が常滑(とこなめ)市の中部国際空港島(セントレア島)を検討しているのに対し、名古屋市は市内の名古屋港周辺への誘致を主張。お互い譲る気配はない。国交省の調査に、名古屋市がいち早くIR誘致に名乗りを上げたが、愛知県と共同歩調を取らない限り誘致は難しい。

最有力候補のハウステンボスは脱落

 長崎県が推す佐世保市のリゾート施設・ハウステンボスはどうか。他地域より一歩も二歩も先行していたが、今はカジノ誘致の気運は萎んだ。ハウステンボスの澤田秀雄社長が「海中カジノ」構想を打ち出すなど旗振り役を務めてきた。ところが同氏がハウステンボス社長を辞め親会社のエイチ・アイ・エスの会長兼社長として経営に専念することになった。ハウステンボスは方針を転換。カジノの運営に加わらずIR誘致が決定したら敷地の一部をIR用に売却することとなった。事実上の撤退宣言である。

 当初、長崎を「オール九州のIR」とすることを九州地方知事会議で議決した。しかし発案者の澤田氏が手を引いたため、福岡県が外れ、この構図が崩れた。この間隙を縫って北九州空港への誘致案が浮上した。だが、地元の北九州市がIR誘致に難色を示したため暗礁に乗り上げている。

 地方の1枠は北海道、愛知、長崎とも選に漏れる可能性が高い。

安倍政権が想定しているのは沖縄

 もともと、政府がIR誘致の最有力候補に想定していたのが沖縄だった。安倍内閣は沖縄経済の振興策の柱として、カジノを含むIR誘致と那覇空港の第二滑走路建設を掲げ、交換条件として普天間基地の辺野古移設推進を挙げていた。2014年の知事選で推進派の仲井眞弘多知事が落選。替わって辺野古移設に反対する翁長雄志氏が当選。さらに現在の玉城デニー氏と2代続いて辺野古移設反対派の知事が続く。それとともにカジノ誘致の話も立ち消えになった。

 安倍政権は諦めたわけではない。辺野古移設は普天間基地返還の根幹をなすもの。次回知事選で辺野古推進派の知事を擁立、知事選の沖縄経済振興策の目玉としてカジノ誘致を打ち出す考えだ。沖縄は、いつカジノの開業を目指すかだけだろう。「最初の3枠に入らないとしても、次は間違いない」(永田町筋)といわれている。

BusinessJournal編集部

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