自動車購入時には、消費税と取得税の2種類の税金がかかるため、従来から二重課税であるとして批判が多かった。そのため、消費税率引き上げにあたって取得税の廃止を求めていた自動車業界に配慮したかたちだ。
取得税に代わる新税は、普通車の場合で購入額の0~3%、環境性能に応じて1%刻みの4区分とする。軽自動車やトラック・バスなどの営業車は当分の間、最高税率を2%に抑える。
税収の見込み額は年約890億円で、14年の取得税1096億円より約200億円の減税となる。新車、中古車ともに対象で、非課税枠は拡大し、自動車販売台数の約半数が非課税となる見通しだが、燃費が良くない自動車であれば増税となる。
政府・与党は、新税の導入によって環境に配慮した車の普及を促す狙いだ。また、消費者の税負担を軽減するよう求める自動車業界に配慮した姿勢を見せつつ、地方税である取得税に代わる税収を確保する制度だ。
だが、大手自動車メーカーの関係者は、「税の名称が変わっただけで、結局、消費税との二重課税は解消されていない」と憤る。むしろ、消費税率が2%上がることを考えれば、消費者にとって税負担が軽くなる感覚はあまりないだろう。
また、非課税とされる環境性能の良い自動車は総じて販売価格が高く、低価格の自動車は環境性能が悪い。言い換えれば、高額な自動車を購入する人にとっては減税、安価な自動車を求める人にとっては増税といえる。また、合わせて軽自動車税も現行の7200円から1万800円に引き上げられる。高所得者層以外にはメリットのない税制改革といえるだろう。
多少値段が高くても、ガソリン代、自動車税、保険料などを考慮してトータルでお得となるのであれば、環境性能の高い自動車を購入するメリットがあるといえるだろう。しかし、実際のところ、いくら燃費のよい自動車であっても、その販売価格に見合うほどランニングコストが安くなるとはいえない。
自動車は、購入時には車両価格に加え消費税と取得税、維持するには毎年の自動車税、車検時の重量税がかかる。ほかにもガソリン税やリサイクル料金、有料道路料金などの負担がある。税金以外にも自動車保険料やガソリン代、点検費用、駐車場代など、すべてまとめると、200万円弱の一般的な自動車に10年乗った場合で、平均して700~800万円かかるとの試算もある。もちろん途中で乗り換えれば、さらに金額は増えるだろう。ちなみに、総費用の5分の1は税金だといわれている。
若者のクルマ離れが叫ばれるようになって久しいが、所得が高くなくても購入しやすい環境とはいえないのが現状だ。
(文=編集部)