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中西貴之「化学に恋するアピシウス」

日本政府、宇宙活用を本格化…安全保障・災害対策・ビジネス拡大に本格利用へ

文=中西貴之/宇部興産株式会社 品質統括部
日本政府、宇宙活用を本格化…安全保障・災害対策・ビジネス拡大に本格利用への画像1
H3ロケット用固体ロケットブースタ(SRB-3)燃焼試験の様子(提供:JAXA)

 政府は毎年12月に開催される宇宙開発戦略本部会合において、日本の宇宙開発の方向性を示す「宇宙基本計画工程表」の改訂を行っています。2019年は12月13日に令和元年度改訂に関する会議が行われました。それをもとに、今後の宇宙ビジネスがどのように進んでいくのかを考えてみたいと思います。

 宇宙基本計画工程表とは、日本における宇宙開発・利用の基本的枠組みを定める「宇宙基本法」に基づき内閣府によって策定され、毎年改訂が加えられるもので、これを読み解くことによって、どこに宇宙ビジネスのチャンスがあるのかを先取りすることができます。令和元年度改訂のポイントは次の3点です。

ポイント1:宇宙安全保障の確保

 この数年で宇宙空間が国家戦略上重要となり、米国やフランスでは宇宙コマンド/司令部が創設されました。また、中国やインドも宇宙空間を重要な戦略拠点のひとつとして開発を進めています。

 一方で、宇宙空間に大量に存在するごみ「スペースデブリ」が宇宙開発を妨げる要因としてクローズアップされています。これらを受け、日本も20年度に内閣府直下に宇宙領域専門部隊を設立し、さまざまな観点から宇宙の安全保障に取り組みます。部隊の目となり耳となるのが、23年度に運用を開始する「宇宙状況把握(SSA)システム」と「SSA衛星」です。

 SSAシステムは地上の望遠鏡やレーダー施設と、23年度に打ち上げ予定のSSA 衛星を使って、地球周辺のスペースデブリを含むあらゆる人工物体を把握しようとするシステムです。上空650km(上空100km以上が一般に宇宙と呼ばれます)にある10cm級の物体を把握する能力で1日に1万回の観測を行い、その情報を自動で処理するシステムなどで構築されます。

 今後、世界各国が宇宙の平和的利用をするにあたって脅威となるスペースデブリなどの把握と情報公開を日本がリードしたい考えです。日本ではすでに多くの民間企業や大学がスペースデブリを除去する技術の開発を進めていますし、岡山県の美星スペースガードセンターなど、地上からの観測もすでに行われています。

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美星天文台 美星スペースガードセンター(「PIXTA」より)

ポイント2:宇宙利用の一層の拡大

 地球温暖化に伴い、大型台風が日本を頻繁に襲うようになりました。台風の進路予測や被害の推定には衛星データが欠かせません。そこで、22年度までに災害時の被災状況の迅速な把握などを可能とする衛星データの提供を実現すると共に、準天頂衛星システムの安否確認システムの機能を強化する目標が掲げられました。

 日本が独自に開発した準天頂衛星システムは世界でも最高精度を誇る測位システムですが、そのデータをビジネスや研究開発に活用するためにはモバイル端末が対応する必要があるほか、政府が持つ衛星データを民間に開放するプラットフォームが必要です。そのようなデータのオープン&フリー化に向けたシステム開発を20年度までに完了し、利用可能データの一層の充実を図るとされています。

 たとえば、農林水産業の自動化、ドローンによる物流、自動運行船など、より多くの分野における実証事業を実施し、先進的な衛星データの利用モデル創出を民間に促します。

ポイント3:宇宙産業・科学技術基盤の強化

 国内外で宇宙開発ベンチャーの動きが活性化しています。また、日本は19年10月に米国提案の国際宇宙探査への参加を表明しています。宇宙開発をビジネスチャンスととらえるベンチャー企業を支援するため、また宇宙の平和的利用のリーダーシップを執るために、20年度には新型基幹ロケット(H3ロケット)初号機の打ち上げを行います。

 現在は国産ロケットの打ち上げコストが高いために日本のベンチャーも海外のロケットを利用して衛星を打ち上げることが多く、それが日本の宇宙ベンチャー成長の足かせになっているという議論もあります。海外の商用ロケットよりも低コストなロケットの開発は、政府の重要な責務となっています。

 また、米国提案の国際宇宙探査については具体的な道筋が見えない部分もあるものの、日本はH-IIAロケットの97.5%という高い成功率と、現状で世界最大積載量の無人宇宙貨物船「こうのとり」を一度の失敗もなく運用している実績をさらに発展させ、月周回有人拠点「ゲートウェイ」への物資輸送や居住・実験モジュール開発に向けての検討に取り組みます。

 10年代には、数多くの民間衛星の打ち上げや民間だけで開発された宇宙ロケットの打ち上げ試験も行われました。海外に目を転じると、ロケット再利用技術の完成や重厚長大型人工衛星を小型衛星に置き換える動きも活発です。10年代は宇宙開発のハードルが大きく下がった年でしたが、20年以降は裾野が広がる時代となります。宇宙開発にかかわる企業にとって、次の10年は政府の公開衛星データや超小型衛星をいかに自社のビジネスに活用していくかが、命運を分ける時代になりそうです。

(文=中西貴之/宇部興産株式会社 品質統括部)

【参考資料】

宇宙開発戦略本部 第21回会合 議事次第」(内閣府)

中西貴之/宇部興産株式会社 品質保証部

中西貴之/宇部興産株式会社 品質保証部

宇部興産品質保証部に勤務するかたわら、サイエンスコミュニケーターとしてさまざまな科学現象についてわかりやすく解説

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